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2010年11月25日木曜日

かけた覚えのない国際通話(IP電話の事例)

●平成22年11月24日付けNTT東日本、NTT西日本の両者による報道発表資料

かけた覚えのない国際通話にご注意ください 」(NTT東日本のサイト)
 最近、IP電話サービスをご利用の方において、「かけた覚えのない国際通話料金が請求された」という事象が発生しており、NTT東日本およびNTT西日本のひかり電話をご利用いただいている一部のお客様からも、同様のお申し出をいただいております。
 調査の結果、お客様がIP-PBXソフトウェア等※1を設置しており、そのセキュリティ対策が不十分な場合に、第三者が内線電話端末登録機能を悪用し、インターネット経由で内線電話端末になりすますことによって、あたかもお客様がひかり電話から発信し
ているかのように、国際通話を行うケースが確認されています。

※ IP-PBXとは、Internet Protocol Private Branch eXchange(インターネットプロトコル構内交換機)の略。IPネットワーク内で、IP電話端末の回線交換を行なう装置およびソフトウェアのことです。企業や家庭などのLANにおいて、IP電話による内線電話網を実現する等の目的で使用されます。

※ 赤字と下線は、私が付しました。


【別紙】内線電話端末なりすましによる不正通話イメージ
 外出先等からインターネット経由で本社のIP-PBXソフトウェア等へアクセスし、IP電話等から発信できるようお客様が設定をしている場合に、第三者によりインターネットを経由して、IP-PBXソフトウェア等の内線電話端末になりすまされることで、IP電話等契約者が意図しない国際電話に接続される事例。
※ 赤字と下線は、私が付しました。

この別紙は、図解を用いた説明をしていますが、イメージをつかみやすいです。
同じようなテーマの問題は以前もありましたが、仕組みが異なっています。

発表資料の内容をまとめると、

「企業や家庭などのLANにおいて、IP電話による内線電話網を実現する等の目的で使用されるソフトウェアを悪用して、インターネット経由で内線電話端末になりすますことによって、あたかも当該企業や個人がひかり電話から発信しているかのように、国際通話を行うケース」

という点が特徴でしょうか。

紹介されている対策は

①必要が無い場合はインターネットからIP-PBXソフトウェア等へのアクセスを許容しない、
②第三者が類推しやすい内線電話端末用のIDやパスワードは設定しない

でした。

2010年11月18日木曜日

「サイバー・ローの現在」(ジュリスト1411号)

ジュリスト(No.1411、2010.11.15.)
「特集・サイバー・ローの現在」


児童ポルノを巡る考え方を整理する上で、有益に感じましたので、備忘のため、メモ。

ブロッキングに関する法律問題(弁護士 森亮二)

7~8頁 
「この一連の手続で特に注意すべきは,ユーザーがアクセスしようとする URL 等の検知の部分である。ブロッキングは,違法情報を見たいと望むユーザーにもそれを見せないようにする措置なので,同意を前提とすることはできない 6) 。ユーザーの同意を得ずに,ユーザーがアクセスしようとする URL 等を ISPが検知することから,ブロッキングはユーザーの「通信の秘密」を侵害するおそれがある。 
6)ブロッキングの仕組みは,基本的にフィルタリング・サービスと同じである。ただしユーザーの同意なしに行われる点が決定的に異なっている。」

ブロッキングの定義と、フィルタリングとの違いが、端的に説明されており、混同しないように注意する必要のあることがわかります。
これらを意識しないと議論されている内容を正確に理解できないことになります。

その他にも、

  1. ブロッキングは「民間による自主的な取組として行われるべき」理由(12頁)、
  2. それと対になると思われる、ブロッキングを行ったISPの民事責任(12頁)、
  3. ブロッキングの手法が持つ課題(13頁)
  4. ブロッキングを児童ポルノ以外の違法情報対策に転用することの当否(13頁)

は前提の再確認にもなるし、特に「4」は意識しておかないと議論や思考が雑になるだけでなく、誤った理解につながることを自覚するよいきっかけとなりました。

インターネットと青少年-青少年インターネット環境整備法の運用と課題(一橋大学名誉教授 堀部政男)


青少年インターネット環境整備法以前の議論、法律の成立、諸制度・機関の整備や検討過程が触れられていて、議論の土台を知るため、または復習的に読む際に、とてもわかりやすいと思いました。

現在の議論は

総務省の「利用者視点を踏まえた ICT サービスに係る諸問題に関する研究会」
青少年インターネット WG 

※ (第1回会合)の開催案内

で行われているようです。

「ネット告発」と名誉毀損(大阪大学教授 鈴木秀美)

下記の事件を題材に検討を加えています。
裁判例の論評も多数紹介されていて(23頁)、その点でも活用の度合いが高そうです。

(第一審)東京地判 平成20-2-29 判時2009号151頁
(控訴審)東京高判 平成21-1-30 判タ1309号91頁
(上告審)最決 平成22-3-15 判時2075号160頁

「事実の相当性にかかわる真実調査義務について、一般個人に報道機関と同程度の調査を要求すべきか、一般個人の場合には,報道機関と比べて事実の相当性の基準を緩やかに判断すべきではないか、という問題」の指摘(29頁)は、最高裁で否定されていますが、なぜ否定されるのか、それをユーザの人に説明し、他人の名誉を毀損することがないようにするためにも、今後も説明方法を考えていく必要があると感じます。