(1)ニュース
Tmedia ニュース 2014年10月08日 より
「
NTTの光回線卸売り・ドコモのセット割を容認 情報通信審議会 SIMロック解除の促進求める」
日本経済新聞(nikkei.com)I2014/10/9 0:44
「
携帯「2年縛り」解消見送り 料金引き下げ道半ば SIMロック15年度解除 総務省最終報告書」
IT Pro 2014/10/08
榊原 康=
日経コミュニケーション
「
総務省の基本政策委員会が報告書案、規制改革議論がようやく決着」
(2)報告書案
総務省の「情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会 基本政策委員会」のサイトにPDFが掲載されていました。
2020 年代に向けた情報通信政策の在り方
-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて-
報告書(案)
話題になっている点のうち、消費者に直接関わりそうなテーマを抜き出して、箇条書きで整理してみました。
適宜、追記なり、修正をしますが、とりあげずのメモとして。
①NTTの光回線の卸売サービス(サービス卸)(3.2以下)
NTT 東西がサービス卸を提供する際に適用される現行の電気通信事業法の規律は、事業者の自主性に配慮した一定の規律が適用され、これにより一定の適正性・公平性・透明性が確保されると考えられる。
としつつ、
こうした現行制度の趣旨を踏まえつつ、総務省において、料金その他の提供条件の適正性及び公平性が十分に確保され、一定の透明性が確保される仕組みの導入を検討することが適当、
としている。
サービス卸が市場の競争環境に影響を与え得る要素として、2つの例を挙げています。
(a) FTTH サービスと移動通信サービスをセットで割り引くこと(セット割引)
→ 携帯電話の過度のキャッシュバック等により、料金の適正性が実質的に損なわれ、
固定通信市場における競争が歪められるおそれ。
(b) (a)を、禁止行為規制を受ける携帯電話事業者が、サービス卸の提供を受けてFTTH サービスと組み合わせて自己のサービスとして行う
→ 「自己の関係事業者のサービスを排他的に組み合わせた割引サービスの提供」 と実質的に同様の行為であると考えられる。
サービス卸は、消費者に対する不必要・不適切な乗り換え勧誘、説明の問題、が今後増える可能性も持っていて、問題の発生に対して注意をする必要はありそうです。
②MVNO(4.2以下。主に4.2.2)
MVNOの推進について、政策的な課題が挙げられています。
MNO のみが運用しているHLR/HSS を MVNO も保有することにより、SIM を独自に発行することが可能となり、MVNO によるサービス設計(音声通話を含む)の自由度も上がる。
→ MVNO が保有する HLR/HSS を MNO の移動通信ネットワークで利用するために必要な機
能を「注視すべき機能」としてガイドライン上位置付けるかどうか検討することが適当である。
③販売奨励金
「現時点においては、これを直接規制することは必ずしも適当ではなく、まずは SIM ロック解除の推進等の競争環境の整備を通じて、事業者による自主的な適正化を促すことが適当であると考えられる。」
④SIMロック解除
事業者側の反論について
「SIM ロックの解除について、事業者から示された懸念については、現時点において、SIM ロック解除に応じないことを正当化する適正性、合理性は認められなかった。」
としている。
この点は、脚注で触れられているように、ICTサービス安心・安全研究会報告書(案)で示されたものが詳しく、それを踏襲しています。
SIMロックは、囲い込みの重要な手段の1つですが、期間拘束との組合せでも威力を発揮していますので、後記の早期解約ルールが確立した後の事後処理(端末)としてSIMロック解除は大事な手当だと思います。
⑤消費者保護ルール(5.以下)
一番の注目は
ア. 契約関係からの離脱に関するルールの在り方
です。
(a)禁止行為
提供条件説明が必要な事項のうち
・「契約締結判断に通常影響を及ぼす重要事項に係る不実告知及び不利益事実の不告知」
・「契約締結に至る動機に関する事項に係る不実告知」
を禁止することが適当であると、としています。
「動機に至る事項」は、不必要なプロバイダの乗り換え勧誘などの問題として従前から指摘されていたところで、これが禁止行為とすべきと示されたのはとても重要だと思います。
動機の錯誤くらいしか対処方法がない領域に踏み込んでいる点が大事です。
(b)取消
こうした禁止行為については、取消し、を検討することが適当である、としています。
消費者契約法4条による取消が消費者契約一般に関するものとして、電気通信分野特有の問題になかなかうまく適用しづらいものがあり、そこを手当てするものになろうかと思います。
(c)初期契約解除ルール
「電気通信サービスの基本的特性を踏まえ、販売形態によらず、初期契約解除ルールを導入することが適当である」
としています。
他方、端末は、
「主要事業者で携帯電話サービスに係る試用サービスが実施される方向であること等を踏まえ、店舗販売の場合における端末等の物品に係る制度化は、現時点では行わないこととし、当面、SIM ロック解除等の推進の事業者の取組状況等を注視することとする」
として、注目されていた「回線契約の解約との連動」つまり制度化は見送られてしまいました。
(d)期間拘束・自動更新付契約(2年縛りの問題)
「提供条件説明や更新月のプッシュ型通知の方法等について改善されることが必要である。この点について、一般社団法人電気通信事業者協会からは、携帯電話事業者が、契約解除料を支払うことなく解約が可能な期間の延長と、更新月が近づいた時点で利用者へのデフォルトでのプッシュ型の通知を行う方向で検討している旨の表明があった。これらの自主的な取組の効果や、初期契約解除ルールの導入の効果等も見ながら、期間拘束・自動更新付契約に関する改善状況をICT サービス安心・安全研究会」等の場で検証し、必要に応じ、更なる対応についての検討を行うことが適当である。 」
とだけ述べるに留められ、何らかの制約を含む見直し、は見送られました。
ちなみに、ICTサービス安心・安全研究会報告書(案)でも、2年縛りが持つ問題点は、多数指摘されてたものの、通知などを工夫するなどにより対処するという方向になっており、制約そのものは入っていませんでした。