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2013年7月26日金曜日

偽ブランド品の海外サイトからの購入

マイナビニュースから。

http://news.mynavi.jp/news/2013/02/06/051/index.html
このニュースで取り上げられている平成25年2月5日には、消費者庁は3つの事項を載せています。
そのネットショッピング、本当に大丈夫?~模倣品の販売が確認された海外ウェブサイトを公表します[PDF]
模倣品の販売が確認された海外ウェブサイト及び模倣品の販売が強く疑われる海外ウェブサイト[PDF]
その商品、模倣品かも…??~模倣品を販売するウェブサイトを見抜く4つのチェックポイント~[PDF]

このうち「模倣品の販売が確認された海外ウェブサイト及び模倣品の販売が強く疑われる海外ウェブサイト」は、その後も数回更新されています。

1.海外サイトからの購入に関する一般的な注意点

●消費者庁(平成24年4月11日)「インターネットを通じた海外ショッピング時のトラブルと注意すべき5つのポイント ~消費者庁越境消費者センター(CCJ)に寄せられた相談から~

これは「消費者庁越境消費者センター」に寄せられたトラブルの特徴をまとめたもののようです。
解決法ではなく、事前の注意ポイントです。

2.模倣品(偽ブランド品)の海外サイトからの購入

(1)購入動機(パターン)

模倣品(偽ブランド品)については、
①「本物と思って買ったら偽物だった」
②「偽物と知って、偽物を買った」
という2つのケースがあります。

消費者庁越境消費者センターFAQにも「Q13」にも、2つのパターンがあることが記載されています。
Q13: 模倣品(偽ブランド品等)と知りながら購入したけれども返品したい、または購入後に模倣品と気づいた場合の対応について、相談は可能ですか?

A: 模倣品はブランド保有者の商標権を侵害するものであるため、関税法により、輸入も輸出も禁止されています。よって、商品が模倣品と知りつつ海外の売主に「返品」することは 「権利侵害品の輸出」にあたり、行うことができません。(商品到着後に模倣品であることに気づいて返品する行為を含む)
   返金等に関するお問い合わせは、利用する決済機関(銀行、クレジットカード会社等)に直接ご相談ください。
   その他、なんらかの対応を希望される場合は情報をCCJまでお寄せください。(ただし、トラブルの解決をお約束することは出来かねますのであらかじめご了承ください。)
※ 赤字と下線は、私が付しました。

①「本物と思って買ったら偽物だった」という事例以外に、②「偽物と知ってわざわざ偽物を買う」ケースがあることに疑問を持つ方もいるかもしれません。
しかし、現実には、一定程度「偽物の需要」、特に「対応する本物がそもそも存在しないロゴだけ使った偽物」、これは「なんちゃって商品」(「フェイク」とかの表示で売られているケースもみたことがあります。)ともいわれるようで、その需要はあるようです。
対応する本物がなくても、ブランドを傷つけるため、権利者にとっては困った変な需要だと思いますが。

私自身はフランド品に興味がないので、今ひとつピンと来ない面もありますが、有名ブランド偽物にまつわる思い出はあります。
それは、小学生のころ流行した、アディダスの青いウインドブレーカーです。
せっかく親や親戚に買ってもらったものの、偽物だった、そもそも似て非なるものだった、という「悲しい」でも今となっては笑える思い出話です。
例)
●胸のロゴが「adidas」アディダスじゃなくて「adidos」アディドス
 (二番目のa(エー)がo(オー)になっていた)
●左腕の白いラインが3本じゃなくて、2本だったり、4本だったり・・・

同世代の方には「あー、それあった」と頷かれる方も多いのではないでしょうか。

(2)「輸入」に伴う問題

商標法プロパーの話はここでは省略し、後記の「輸出」と比較する関係で、関税法のことのみ触れることにします。
購入動機パターン②は、購入側に「偽物」の認識があるので、「偽物の輸入の可否」の問題を検討をする必要があります。
用語の定義は次のようになっています。

●「輸入
 外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経て本邦に)引き取ること(2条1項1号)

●「輸入してはならない貨物
 商標権を侵害する物品も該当します。
第69条の11第1項
  次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九  特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
税関長は、商標権侵害品で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる、とされています(関税法第69条の11第2項)。

※ 関税法76条(郵便物の輸出入の簡易手続)が適用除外としているのは、「第67条から第69条まで」と「第70条から第73条まで」であり、第69条の11は含まれていません。

●違反
 「輸入してはならない貨物」を「輸入」すると、罰則があります。
 未遂、予備も構成要件が設けられています。
第109条
 (1項省略)
2  第69条の11第1項第7号から第10号までに掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3  前2項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。
 (4項省略)
5  第2項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

3.模倣品(偽ブランド品)の海外サイトへの返品

ところで、上記の消費者庁越境消費者センターの「Q13」に掲載されているように、偽ブランド品を海外に返品」することは、それ自体が関税法的に問題のある行為となります。

(1)輸出してはならない貨物

 商標権を侵害する物品も該当します。
第69条の2第1項
 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。
三  特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品
●「輸出
 内国貨物を外国に向けて送り出すこと(2条1項2号)

●「内国貨物
 本邦にある貨物で、輸出の許可を受けた貨物及び外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)で輸入が許可される前のもの(「外国貨物」)でないもの及び本邦の船舶により公海で採捕された水産物(2条1項3号4号)
消費者の手元に届いたものは「外国貨物」ではないので、「内国貨物」になり、海外へ返送することは「輸出」に該当してしまいます。

税関長は、商標権侵害品で輸出されようとするものを没収して廃棄することができる、とされています(関税法第69条の2第2項)。

●違反
 「輸出してはならない貨物」を「輸出」すると、罰則があります。
 未遂、予備も構成要件が設けられています。
第108条の4
 (1項省略)
2 第69条の2第1項第2号から第4号までに掲げる貨物を輸出した者(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻し(同項第3号及び第4号に掲げる物品であつて他の法令の規定により当該物品を積み戻すことができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより行うもの及び第69条の11第2項の規定により命じられて行うものを除く。)をした者を含む。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3  前2項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。
 (4項省略)
5  第2項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(2)故意

「返品したい」と考えるのは、、購入パターン①「本物と思って買ったら偽物だった」場合は「偽物だとわかったから」です。つまり、「これは偽物だ」との認識を持った」わけです。
他方、購入動機パターン②「偽物と知って、偽物を買った」人は、そもそも「偽物だ」という認識があります。
ですから、いずれの場合も、権利侵害品を返品しようとする人には、関税法違反(輸出できない貨物の輸出)の故意が認められてしまいます。

4.返せないから模倣品(偽ブランド品)を他人にあげる・・・

「商標侵害品」は、海外に返品できないので、結局は「廃棄」するしかないと思います(商標法36条2項参照)が、廃棄せずに「欲しい」という他人に譲渡したらどうなるでしょうか。
関税法第112条
 第108条の4第1項若しくは第2項(輸出してはならない貨物を輸出する罪)、第109第1項若しくは第2項(輸入してはならない貨物を輸入する罪)・・・、の犯罪に係る貨物について、情を知ってこれを運搬し、保管し、有償若しくは無償で取得し、又は処分の媒介若しくはあつせん(以下この条においてこれらの行為を「運搬等」という。)をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(みなし侵害)
商標法第37条
 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
二  指定商品又は指定商品に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
(侵害の罪)
商標法第78条の2
 第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
つまり、損を他人に押しつけるようなことはしてはいけない、ということです。


【その他参考サイト】

一般社団法人ユニオン・デ・ファブリカン



2013年7月16日火曜日

携帯電話の番号と070

マイナビニュースから。

総務省はなぜ携帯電話に「070」番号を開放した? その経緯を徹底解説
http://news.mynavi.jp/articles/2013/04/03/keitai_070/index.html


1.これに関する告知は、総務省の情報政策(ICT政策)のサイトにあります。

(総務省)
携帯電話の電話番号への070の追加について

そこに下記のように記載されています。
平成25年11月から、携帯電話に070から始まる番号が順次加わります。

●現在070から始まる番号はPHSで利用されていますが、携帯電話でも利用可能となります。

  • PHSで利用している電話番号は、070-5、070-6で始まる番号です。(※1)

  • 携帯電話で利用する電話番号は、070-1~4、070-7~9で始まる番号です。(※1)

  • 携帯電話もPHSも、現在ご利用の電話番号は継続してご利用いただけます。
●PHSに電話をかけると、最初に特別な呼び出し音が鳴る予定です。(※2)

(※1) 将来、携帯電話とPHSの間で番号ポータビリティを導入することも検討されています。導入された場合は、携帯電話とPHSを電話番号で区別できなくなります。
(※2) 当該呼び出し音は株式会社ウィルコムにより、平成25年11月までに提供開始予定です。
2.電気通信番号規則

今回の件は、電気通信番号規則の改正で行われましたが、この改正省令は2012年12月12日に公布・施行されています。

 (1)公布・施行   平成24年12月12日
     電気通信番号規則の一部を改正する省令(平成24年総務省令第102号)
     本文  PDF
     概要  PDF
<電気通信番号規則9条1項>
3号
  携帯電話に係る端末系伝送路設備を識別するための電気通信番号は、別表第一第6号に定めるものとする。
4号
  PHSに係る端末系伝送路設備を識別するための電気通信番号は、別表第一第7号に定めるものとする。
上記の「別表第一」の「第6号」「第7号」の改正です。

 (2)経緯
 上記の総務省サイトでも紹介されていますが、電気通信番号規則改正の経緯については情報通信審議会の答申などでみることができます。

  ①平成24年3月1日
    携帯電話の電話番号数の拡大に向けた電気通信番号に係る制度等の在り方
    ―情報通信審議会からの答申―

  ②平成24年10月26日
    電気通信番号規則の一部改正に関する情報通信行政・郵政行政審議会からの答申及び改    正する省令案等に関する意見募集の結果


3.何が起きるのか

この点が一番気になるところです。
これまでは、「070」=PHS、と即断できた(規則上でも「70CDEFGHJK(Cは0を除く。)」がPHSの番号とされていました。 )のが、そうは限らなくなります。
規則上でも「70CDEFGHJK(Cは5及び6に限る。)」となったので、070だけではなく「070-C」のCにあたる番号をみないといけなくなったわけです。

これに伴い想定される課題として、マイナビニュースの記事では、「発信」と「MNP」の点を挙げています。

(1)発信
例えば固定電話から携帯電話への発信で使われる選択中継サービス(いわゆるマイラインのようなサービス)でPHSへの発信に非対応の場合、070-C番号からPHSと携帯電話を識別する必要がある。これにともない、PBXやACRへの対応も図る必要がある。また、0120などの着信課金サービス、0570の統一番号サービスなども、070番号の携帯電話からも利用できるように改修が必要な場合もある。
(2)MNP
 これに対しては、やはり070番号開放と同じ課題が残されている。単純に070-Cでの見極めができなくなるため、呼び出し音などでの識別、事業者コードなどでの識別といった対応が必要となる。PBXやACRでの対応も同様だ。
 さらに、携帯各社ではSMSの相互接続が可能になっているが、これにPHSは入っておらず、SMSの相互接続ができない。携帯電話・PHS間のMNP導入に際しては、SMSの相互接続が可能になることが求められている。
  ※ 赤字と下線は私が付しました。

(3)ウィルコムの告知

マイナビニュースの記事にもあったので、おそらく影響が大きいであろう株式会社ウィルコムの告知をみてみたら、次のような告知がありました。
平成25年(2013年)11月から、携帯電話に070から始まる番号が順次加わります。
2013年4月1日

■ 現在070から始まる番号はPHSで利用されていますが、携帯電話でも利用可能となります。
- PHSで利用している電話番号は、070-5、070-6で始まる番号です。※1
- 携帯電話で利用する電話番号は、070-1~4、070-7~9で始まる番号です。※1
- 携帯電話もPHSも、現在ご利用の電話番号は継続してご利用いただけます。
■ PHSに電話をかけると、最初に特別な呼び出し音が鳴る予定です。※2

※1 将来、携帯電話とPHSの間で番号ポータビリティを導入することも検討されています。
   導入された場合は、携帯電話とPHSを電話番号で区別できなくなります。
※2 当該呼び出し音は、平成25年(2013年)11月までに提供開始予定です。
携帯電話とPHSの間でMNPが導入されると、便利ですし、競争という意味では良いことだと思いますが、携帯電話とPHSとを、電話番号(070-C)で区別できなくなると、よくある通話が「PHSどうしなら通話が無料」サービスように、無料となる範囲の識別がユーザにとって不可能になるのではないか、広告などに問題が生まれないか、契約時の説明の問題に関して、溝が埋まらない事業者(実際には代理店)と消費者団体の間に、新たな課題を生み出すのではないかと心配してしまいます。

(4)23条照会

MNPが携帯PHSで始まると、契約者情報の照会はまた手間がかかるようになりますね。

ちなみに、契約会社の探索は、ここがスタートになります。

電気通信番号指定状況(総務省)



2013年7月8日月曜日

子ども、親とネットなどなど

最近目に留まったものを思いつくまま五月雨式にメモ。。。。


1.未成年者のネット利用と法律に関する最近の話題

(1)未成年者の選挙運動

今年の公選法改正により、ネットを通じた選挙運動が7月の参院選から解禁されますが、未成年者が選挙運動をすることは解禁されていません。
このことは、既に関係各所が大きく告知しているところです。
公職選挙法では(禁止)+(違反に対する刑罰)が定められ、次のようになっています。
(未成年者の選挙運動の禁止)
第137条の2
1 年齢満二十年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2 何人も、年齢満二十年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。

(事前運動、教育者の地位利用、戸別訪問等の制限違反)
第239条
 次の各号の一に該当する者は、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第129条、第137条、第137条の2又は第137条の3の規定に違反して選挙運動をした者
(2)未成年者の「詐術」(民法21条)

 下記でも触れられていますが、未成年者がサービス利用した際に、生年月日や年齢を成人となるようにして入力した場合に「詐術」といえるか、事業者は取消を拒否できるのか、は悩ましい問題です。
 私見ですが、生年月日や年齢を成人となるように入力することは、ある意味で仕方ないことのように思います。そうしないと使えないとわかっているのですから、それでも使いたいという欲望に勝てというのは無理がありそうな気がします。
 準則も、なんだかとっても迷ったような表現になっていますね。

  ●電子商取引及び情報財取引等に関する準則Ⅰ-4
・・・事業者が電子商取引の際に画面上で、申込者の生年月日(または年齢)を入力させるようにしているのに、未成年者が虚偽の生年月日(または年齢)を入力し、その結果、事業者が相手方を成年者と誤信した場合などは、当該未成年者は取消権を失う可能性もあると解される。
 もっとも、詐術を用いたと認められるか否かは、卖に未成年者が成年を装って生年月日(または年齢)を入力したことにより判断されるものではなく、事業者が故意にかかる回答を誘導したのではないかなど、最終的には取引の内容、商品の性質や事業者の設定する画面構成等個別の事情を考慮して、判断されるものと解される。
この点は、田島編「インターネット新時代の法律実務Q&A」の「第9章 子どもとネット」が手短にまとまっていて、親名義のクレジットカード利用と併せて読むと、わかりやすいです。 

(3)オンラインゲームにおける高額課金

 去年話題になったガチャ、コンプガチャ関係でのまとめです。

  ①消費者庁
   ●インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A
   ●オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について (H24.5.18.)

  ②一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)
   ●「オンラインゲーム安心安全宣言
   ●「オンラインゲームガイドライン
    
  ③一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)
   ●コンプリートガチャ トガチャ トガチャ トガチャ等に関するガイドライン
   ●ゲーム内表示等に関するガイドライン
   ●リアルマネートレード対策ガイドライン

(4)フィルタリングサービス

 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律第2条10項で「フィルタリングサービス」の定義があります。

 また、同法では「成年」とは異なる「青少年」が定義されています。
第2条 この法律において「青少年」とは十八歳に満たない者をいう。
携帯電話インターネット接続役務提供事業者は、契約の相手方が青少年であるときに、フィルタリングサービスの提供が義務づけられ、同サービスの利用を条件として役務提供しなければならないとされています(第17条)。

しかしながら、スマートフォンの場合、Wi-Fi接続ができ、Wi-Fi接続の場合、この17条の適用対象外となります。
自宅の無線LANや公衆無線LANで接続する場合は、対象外となるわけです。
また、パソコンでの接続はもちろん、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、タブレット(3G機能なし)、を使用したインターネットに接続も、「携帯電話インターネット接続役務」には該当しないので、フィルタリングの利用を条件とせず契約できることになります。

この場合の適用は18条になり、「求められたときは・・・を提供しなければならない。」という形態になり、提供が義務づけられるわけではなくなります。

ということで、親としては、契約時に、こういった点につきショップなどで説明を求め、ある程度の理解を得ておく必要はありますね(フィルタリング設定あれば全部OKというわけではないので)。

なお、法令や解説は下記で一覧できます。
青少年育成(インターネット利用環境整備(関係法令)


【追記】2014.8.22

各地の自治体で、上記の「穴」に関して、対応しようと条例を改正した例が結構あります。
条例の内容は必ずしも同じではありませんが、制定された内容をみていると、
①事業者に対し
  「無線LANに係るフィルタリング等の説明義務」
  「使用者が青少年か否かの確認義務」
②保護者に対し
  「携帯電話事業者が実施する説明を聴く努力義務」
などを課すものが多いようです。

例)たくさんあるようなので、一部のみ。
千葉県青少年保護育成条例23条の6(平成23年改正)
埼玉県青少年健全育成条例21条の4(平成25年改正)


2.最近の特集や書籍

●特集①「いじめ問題と子どもの権利」(自由と正義(64巻2013年4月号)

・竹内和雄「スマホ時代のいじめの現状と対応について


●「特集 親子で考えるネットの上手な利用法」(ウェブ版「国民生活」2012年8月号

・藤川大祐「スマートフォン時代のメディアリテラシー」(pdf

・桑崎 剛「スマホ・SNS時代の賢いネット利用力の育成」(pdf

・永坂武毅「絵本をとおして情報モラルを考える」(pdf


●「保護者のためのあたらしいインターネットの教科書」(中央経済社)

 編著のインターネットユーザー協会の紹介記事

ヘビーユーザーではない保護者をターゲットにしているということで、ウェブでの書評は概ね評判はよいようで、実際に読んでみると、今を知るには、わかりやすい本だと思いました。




2013年7月2日火曜日

詐欺等の犯罪と「三種の神器」

1.詐欺と「三種の神器」

以前から、ヤミ金、振り込め詐欺などにおける「三種の神器」は、次の3つだといわれていました。

①他人名義の預金口座
②他人名義の携帯電話
③名簿

だいぶ前に、ある委員会で、別の弁護士が普通に発言していた記憶があるので、詐欺に関する「三種の神器」とは定着した言い方だと思っていましたが、いつごろ、そういう表現になってきたのかな、とふと思い立ち、改めてウェブ上で調べてみました。

上記の3つを捉えて「三種の神器」と書いてあった記事が下記にありました。

●「キャバクラで借金の果てに農水省事務官が手を出したこととは…
 (MSN産経ニュース2012.8.19)
 なかなか被害件数が減らない振り込め詐欺。捜査関係者によると、他人名義の銀行口座は、他人名義の携帯電話、被害者に電話をかけるためのさまざまな名簿とともに、犯行グループが正体を隠して、詐欺をするための「三種の神器」とも呼ばれているという。
公的機関系の書類で何かないかと検索してみたものの、「三種の神器」という言葉を使っているものはみつかりませんでした。
ただし、振り込め詐欺における「犯罪のツール」が上記の3つであることは、携帯電話不正利用防止法成立過程での国会での議論にありました。
62 - 衆 - 総務委員会 - 12号
平成17年03月29日
○石井(啓)議員
 「この振り込め詐欺については、犯罪のツール、道具が三つあると言われています。一つは他人名義の銀行口座、二つ目には匿名の携帯電話、三つ目はいろいろな名簿、この三つが犯罪のツールと言われておりますけれども、」
また、詐欺集団にとって、①口座と②携帯の必要不可欠性・重要性、を明記したものもみつかりました。

振り込め詐欺撲滅アクションプラン(2008年7月)
 「3 匿名の携帯電話と口座の一掃」
「振り込め詐欺は、匿名化した携帯電話と口座なくして成り立たない。」
●国民生活白書平成20年度版
 「3.消費者被害の状況と経済的損失額について
「そもそも、振り込め詐欺には匿名の口座と携帯電話がなくては成り立たず、・・・これら匿名の口座と携帯電話の発生を防ぐための規制や事業者の自主的な取組は振り込め詐欺の「道具」を押さえることになり、犯罪防止のため今後も重要な対策である。」

2.振り込め詐欺対策と「三種の神器」

上記の「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」に関し、これに基づいて実施される施策の有効性を評価する「総合評価書」がありました。
場所
→ 警察庁の「政策評価」ページの「事後評価 3 総合評価方式 振り込め詐欺対策の推進」

総合評価書(平成24年3月)(PDF)

次の4つの項目(視点)から評価されていました。

①検挙の徹底
②不正に流通する預貯金口座対策
③不正に流通する携帯電話対策
④その他の犯行ツール対策

このうち、②「口座」は「開設の検挙」「口座凍結」「凍結名義人リストの運用」で、かなり効果があったようで、口座利用タイプの振り込め詐欺の認知件数は約半減でした。

効果があった反動か、被害者から現金を直接受け取る手口に切り替えられ、そちらが増加、という皮肉な結果になって、そちらの効果的対策が求められているのは、昨今の報道などで既に明らかになっているところです。

これに対して、②「携帯電話」は、詐欺罪、携帯電話不正利用防止法違反による積極的な検挙などから一定の効果はあがってるようですが、口座のような劇的な減少というところまでは至ってないようです。
携帯電話と口座との違い、について、総合評価書には、次の記載があります。
 犯行に利用された携帯電話については、同一電話番号による再被害を防止するため、被害を認知した警察署長から携帯電話事業者に対して「契約者確認の求め」を行い、求めを受けた携帯電話事業者からの本人確認に当該携帯電話の契約者が応じない場合には、携帯電話事業者は当該契約者への役務提供を拒否することができるという法的枠組みの積極的運用を図っている (注)。

(注) 被害拡大防止のためには、犯行に利用された携帯電話を即時に停止することが最も効果的であるが、携帯電話不正利用防止法を立法する際の検討の過程で、憲法で保障された表現の自由、通信の秘密との関係等の問題があるとの指摘を踏まえ、それに代わる方法として、契約者確認の求めの仕組みが設けられた経緯がある
※ 赤字と下線は私が付しました。

口座凍結も結構揉める金融機関はありますが、揉めなくても早く対応してもらえれば、効果が大、ですが、携帯電話通信役務提供は通信の秘密の壁もあり、ワンクッション必要ですから、効果が薄まる面はあるでしょう。
それから、携帯電話の不正な取得は、どうしても末端の人が行うため、検挙されるとしても、その者の代わりはいくらでもいるということもあるかもしれません。


なお、携帯電話不正利用防止法8条に基づく要請(「確認をすることを求める」こと)の性格について、前述の同じ委員会で、次のような質疑があったので、メモしておきます。

62 - 衆 - 総務委員会 - 12号
平成17年03月29日

○塩川委員
 今、最後のところの、警察の事業者への契約者の確認を求めることができる件について、法案の中身に沿って何点か確認をさせていただきます。法案の第八条は、警察が、犯罪利用の疑いがあると認めた場合、事業者に対し、契約の確認の実施を求めることができると規定をし、警察の求めを受けた事業者は契約者の確認を行うことができるとしております。
 警察の通知の性格は、犯罪捜査権限にかかわるものではなくて、犯罪防止や防犯という警察行政の観点からのものであり、この法案の第八条は契約者確認の内容や契約情報の提供を求める権限を付与したものではないと考えます。 この点の確認を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○石井(啓)議員
 警察署長によります契約者確認をすることの求めは、契約者を特定できない匿名の携帯電話を排除することによりまして、振り込め詐欺等の犯罪の被害拡大を未然に防止する目的で行うものでございます。
 したがいまして、委員が御指摘のとおり、この規定は警察署長に犯罪捜査のために契約者確認の内容や契約者情報の提供を求める権限を付与したものではございません。

○塩川委員
 この法案の第八条は、犯罪捜査における契約者情報の捜査当局への提供について、刑事訴訟法の手続、令状主義によることを変更するものではない、このように考えますが、この点いかがでしょうか。
○石井(啓)議員
 第八条の意義は先ほど答弁したとおりでございますけれども、警察署長によります契約者確認をすることの求めといいますのは、特定の犯罪の嫌疑を前提とする犯罪行為にかかわる携帯電話の契約者を探知しようとするための捜査活動ではなく、また、契約者情報の捜査当局への提供を求めるものではありません。契約者情報が犯罪捜査に必要となる場合は、従来どおり刑事訴訟法に基づき所要の手続がとられることになっているというふうに承知をしておりまして、従来の手続を変更するものではございません。

なお、少し前に、やはり犯罪や悪徳商法にとって重要な手段として機能しているバーチャルオフィスにする警察庁と総務省の取り組みについての公表資料の記事について触れた。

バーチャルオフィスの機能と法規制、電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者における疑わしい取引の参考事例(総務省)」2013年6月19日水曜日