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2015年9月21日月曜日

ネット接続の実効速度の計測と表示

上記の朝日新聞のツイートで取り上げられているものは下記の研究会の出した報告書。

インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会

(第9回)平成27年7月14日(火) 

配付資料には、報告書案などが掲載されています。


●報道資料(総務省)平成27年7月31日
「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」報告書等の公表及び意見募集の結果

44頁以下に「3.計測結果の利用者への情報提供手法について」という記載があります。
「基本的な考え方」として
実効速度等の計測結果を利用者に適切に情報提供するためには、以下の二つの観点のバ ランスを確保することが必要と考えられる。
・一般利用者にとって分かりやすく誤認しにくい表示であること
・一般利用者にとって必要と考えられる情報の表示であること
が掲げられています。

例えば速度表示は「実際に使ってみないとわからない」典型であって、速度は客観的に数値が出るものの、利用者の「体感」といった主観的なものが大きく支配します。

電気通信事業法改正(来年施行)で、導入された初期契約解除の行使にも、速度は大きく影響するので、表示については頭の痛いところだろうと思います。

2015年9月20日日曜日

消費者契約法の改正問題

日経電子版に載った社説↓

副作用大きい消費者契約法改正の再考を(日経電子版社説)
2015/8/10



消費者契約法専門調査会が出した「中間とりまとめ」をめぐり、いろいろな反応が出ています。
本来的悪質業者とその他の業者を、同一平面というか空間というか、そのような扱いをするほかないところに、強い対立(ただし実際は咬み合ったものではないと感じます。)が生じてしまう原因があると思います。
追々整理していくとして、メモ。

消費者契約法専門調査会

消費者委員会 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」(PDF)


法務ブロガーの記事

消費者契約法改正の動きと日経社説」(川村哲二弁護士のブログ)

消費者契約法改正をめぐる暗闘の始まり?」(企業法務戦士の雑感)


「消費者契約法見直しに関する説明会」に出席してかえって不安が増すばかりの企業法務担当者たち(企業法務マンサバイバル)

2015年9月11日金曜日

携帯料金

ロイターのツイッターから。
この点は、昨年の報告書にも、課題に挙げられていたところですが、この方式での引き下げがよいのかは別問題だと思う。


2015年9月3日木曜日

電気通信サービスの消費者保護ルールの改正(3)


(電気通信事業者等の禁止行為)


第27条の2(新設)
 電気通信事業者又は媒介等業務受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
① 利用者に対し、第26条第1項各号に掲げる電気通信役務の提供に関する契約に関する事項であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為。
② 第26条第1項各号に掲げる電気通信役務の提供に関する契約の締結の勧誘を受けた者(電気通信事業者である者を除く。)が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為(利用者の利益の保護のため支障を生ずるおそれがないものとして総務省令で定めるものを除く。)

1.不実告知・事実の不告知

(1)「利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」(1号)

①定義など

禁止行為については、省令に委任している部分がありません。
該当性を判断する上で大事な「利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」(1号)とは何か、については、具体的な内容は明らかにされておりません。

②禁止行為違反の効果


禁止行為に違反した場合の民事効に関しても定めがありません
違反が認められた時に契約はどうなるのか?は残された課題です。

2.不実告知・事実の不告知と取消権の付与

(1) 過去の議論

上記1に示した2つの点に関しては、下記の報告書にて、研究会の考え方が示された部分があります。

(プレスリリース)
平成26年12月10日
「ICTサービス安心・安全研究会報告書 ~消費者保護ルールの見直し・充実~~通信サービスの料金その他の提供条件の在り方等~」及び意見募集の結果の公表

●2014年(平成26年)12月
ICTサービス安心・安全研究会 報告書
 ~消費者保護ルールの見直し・充実~
 ~通信サービスの料金その他の提供条件の在り方等~

(2) 違反に対する取消権の付与の必要性

報告書11頁の「3. 契約関係からの離脱のルールの在り方」 の冒頭で「3.1禁止行為・取消ルール」として「3.1.2. 考え方」の中で
提供条件の説明が必要とされる事項のうち、利用者の契約締結の判断に通常影響を及ぼすべき重要事項を可能な限り具体的に列挙し、明確化を図った上で、これらの事項に関する不実告知又は不利益事実の不告知を禁止することが適当であると考えられる。その上で、事業者による当該禁止行為違反といった一定の行為により利用者が誤認した場合の取消について検討することが適当である。
と具体的列挙と明確化の必要性、違反により生じた誤認に関する取消権の検討の必要性、が書かれていました。

(3) 取消権の付与の課題

しかし、同時に、脚注20では
電気通信事業法において不実告知等違反に関する取消権を付与する場合には、電気通信サービスの技術革新の進展が早いことにより、契約締結時点には不実告知等に該当したものが、後に不実等ではなくなる場合もあり得ることも踏まえ、検討することが適当である。
とも記され、禁止行為を具体的にすること・取消権を付与することが必ずしも消費者保護とはならない難しさがあることが指摘されていました。
内容が短期に容易に変化しうるものは、あまり具体的にしてしまうと、かえって柔軟さを欠いてしまうし、機動性も失ってしまうので、変化に対応できないという別の問題を生んでしまうでしょう。
法律ではもちろん、省令に委任しなかったのは、こうした背景があるからではないかと思われます。

とはいえ、「利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」(1号)の例示や判断要素は必要ですから、ガイドラインその他で一定の例示を行うことが望まれます。

3.動機の扱い

ところで、上記の報告書11頁では、不実告知が「動機」に影響を及ぼす場合についても触れています。
必ずしも契約対象であるサービスの「内容」や「取引条件」とはならない契約締結に至る動機に関する事項に関しても、販売形態にかかわらず、提供条件の説明時の不実告知を禁止することが適当であると考えられる。その上で、事業者による当該禁止行為違反といった一定の行為により、利用者が誤認した場合の取消について検討することが適当である。
脚注21では
販売勧誘活動時の話法が契約締結に至る動機に関する事項にどのような場合に影響を及ぼすのかといった判断基準等も含め、検討することが適当である。
このように、動機に誤認が生じた場合の対処の必要性は認めつつ、動機がどんな場合に取り込まれるのかが課題であること、が示されています。

動機については、消費者契約法でも取り込んでおりませんし、電気通信役務提供契約に固有の定型的な作用のパターンが実証的に認められているわけでもありません。

現状では、動機を取り込まなかったことは当然の帰結だったと言えるでしょう。

ただ、課題ではあるので、動機に作用した事例は蓄積していくべきです。

(2018.12.加除訂正)



2015年9月2日水曜日

電気通信サービスの消費者保護ルールの改正(2)

今回の改正の中で最も注目すべき項目と言える部分です。

(書面による解除)


第26条の3(新設)
1 電気通信事業者と第26条第1項第1号又は第2号に掲げる電気通信役務の提供に関する契約を締結した利用者は、総務省令で定める場合を除き前条第1項の書面を受領した日(当該電気通信役務(第26条第1項第1号に掲げる電気通信役務に限る。)の提供が開始された日が当該受領した日より遅いときは、当該開始された日)から起算して8日を経過するまでの間(利用者が、電気通信事業者又は媒介等業務受託者が第27条の2第1号の規定に違反してこの項の規定による当該契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、これによつて当該期間を経過するまでの間にこの項の規定による当該契約の解除を行わなかつた場合には、当該利用者が、当該電気通信事業者が総務省令で定めるところによりこの項の規定による当該契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間)、書面により当該契約の解除を行うことができる
2 前項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除は、当該契約の解除を行う旨の書面を発した時に、その効力を生ずる
3 電気通信事業者は、第1項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除があつた場合には、利用者に対し、当該契約の解除に伴い損害賠償若しくは違約金を請求し、又はその他の金銭等(金銭その他の財産をいう。次項において同じ。)の支払若しくは交付を請求することができない。ただし、当該契約の解除までの期間において提供を受けた電気通信役務に対して利用者が支払うべき金額その他の当該契約に関して利用者が支払うべき金額として総務省令で定める額については、この限りでない
4 電気通信事業者は、第1項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除があつた場合において、当該契約に関連して金銭等を受領しているときは、利用者に対し、速やかに、これを返還しなければならない。ただし、当該契約に関連して受領した金銭等のうち前項ただし書の総務省令で定める額については、この限りでない。
5 前各項の規定に反する特約利用者に不利なものは、無効とする。 

※文字の色つけ、下線付けは、私が行いました。

1.初期契約解除


法文では「書面による解除」という見出しがついていますが、これは「初期契約解除ルール」として導入が決まっていたもので、改正の目玉になる部分です。

これまで電気通信事業法には、電気通信役務提供を受けている利用者と事業者との間の契約関係に直接影響を及ぼす規定、いわゆる「民事効」を定めた規定はありませんでした。
消費者との問題は、事業者による自主的解決に委ねるというものが同法の趣旨であり、ガイドラインでもその点は明示されていたことです。

また、電気通信役務提供は、特定商取引法の適用除外とされており、消費者にトラブルが生じた場合にも同法を使って解決を模索することができませんでした。

こうして、消費者が電気通信役務提供契約の解消を希望しても、もっぱら合意によるか、一般法での解決を模索するしかなかったわけです。

しかしながら、携帯電話の契約や、光回線・ADSL回線(のりかえも含む)など、強引な勧誘、最近では遠隔操作型ののりかえなど、トラブルが絶えず、改善が長年求められてきました。
もちろん、事業者側も無為、放置であったわけでなく、規制を受けないよう、自主的にいろいろな解決策を打ち出し、対応を図ってはいました。
そのことは、各種団体の自主基準の内容をみるとわかりますし、いろいろな委員会でも主張されてきました。

それでも、トラブルや相談は減らないので、総務省の各委員会やWG、消費者委員会などでも、たびたび取り上げられ、そのたびに、まとめられる報告書等の内容が、民事効をはじめとする各種の規制に前向きな状態から法改正に強く働きかける、というものになっていきました。

今回の改正は、これを踏襲したものです。

2.今後の課題


大事な点が省令に委ねられており、現時点では、その内容が不明ですが、課題は次の点でしょう。

①初期契約解除の対象となる電気通信役務提供契約の範囲(1項)

契約締結後に書面を作成交付すべき契約の全てが該当するのではなく、それよりも狭い範囲とされるようです。

 具体的な論点としては「モバイルが入るか否か」(いわゆる「使ってみないとわからない」ということがあてはまりやすいものを巡った対立)があります。

②初期契約解除の際に、利用者が負担する金額(3項)

利用料といった消費者からも見えやすい利益の対価
 工事費、事務手数料といった事業者の負担であるが、解除する消費者からは見えにくいもの(意識の外側になりやすいもの)

③初期契約解除に関する説明の程度、締結後書面への記載の程度



【追記】H27.9.19.

消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(第15回)
(平成27年9月10日(木)10:00)

この配布資料に、事務局が作った論点整理の資料のほか、事業者側の意見や要望が出ており、省令や告示が重要な意味を持ってくることがよくわかります。
(規定のやり方によっては、極端な言い方をすれば、解除権を実質的に無力にすることも不可能ではないということ)


【参考文献】
国会の記事録の参照箇所も記載されています。コンパクトにまとまった資料で、過程を短時間で見直すには便利です。

★「立法と調査」2015.7 No. 366(参議院)

「調査査室作成資料」のページ

(PDF)
電気通信事業法等の一部を改正する法律をめぐる国会論議
― 通信自由化から30年後の法改正 ―
総務委員会調査室 齋藤 博道 






2015年9月1日火曜日

電気通信サービスの消費者保護ルールの改正(1)

電気通信サービスの消費者保護ルールについては、問題点の指摘と議論がなされていながら、なかなか法律の整備にたどりつかなかったのですが、電気通信事業法と放送法が改正され、全部ではないですが、「一歩」がようやく踏み出されたようです。

電気通信事業法等の一部を改正する法筒が平成27年5月可決成立し、公布されました。
この改正は「電気通信事業法」、「電波法」、「放送法」の3つの改正を含んでいます。

電波法の改正は、別記事「技適マーク問題(電波法改正)」で触れました。

ここでは、電気通信事業法と放送法の改正の中心にある、消費者保護ルールに関する規定の改正についてみてみます。

施行期日は公布の日(平成27年5月22日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日ですが、まだ未定です。

関係する「政省令」「ガイドライン」の改正、改訂もまだです。

そこで現時点での法文からわかる概要部分だけをなぞっていくという形にとどまります。

【追記】
消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(第15回)

この配付資料に、省令告示の整備スケジュールの想定が書かれており、年内にパブコメまで行ってしまいたいようです。


★記した条項は、下記の法律案を基礎にしています。


●議案審議経過情報

電気通信事業法等の一部を改正する法律案(衆議院のサイト)
●「第189回国会(常会)提出法案」(総務省)


 (書面の交付)

第26条の2(新設)
1 電気通信事業者は、前条第一項各号に掲げる電気通信役務の提供に関する契約が成立したときは遅滞なく総務省令で定めるところにより書面作成し、これを利用者(電気通信事業者である者を除く。以下この条及び次条において同じ。)に交付しなければならない。ただし、当該契約の内容その他の事情を勘案し、当該書面を利用者に交付しなくても利用者の利益の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして総務省令で定める場合は、この限りでない。
2 電気通信事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、利用者の承諾を得て当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて総務省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該電気通信事業者は、当該書面を交付したものとみなす
3 前項に規定する方法(総務省令で定める方法を除く。)により第一項の規定による書面の交付に代えて行われた当該書面に記載すべき事項の提供は、利用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該利用者に到達したものとみなす

※赤い字と下線は私が付しました。

契約締結前に行われる提供条件の概要の説明としての書面とは異なり、契約成立後に、遅滞なく、書面を作成して交付することを求める規定です。
もちろん、電気通信役務提供契約を要式行為とするものでもありません。

こうした書面が導入された背景は、「契約を締結した後で自分がどういう契約をしたのか分からない」ことを解消するためです。

ただし、利用者の承諾を条件として、書面記載事項を(所定の)電子的な方法で提供することで「交付」とみなされます。

特徴は第2項の「交付」にみなされる「提供」と、「提供」が利用者に到達したとみなされる場合、について来ている第3項でしょうか。

書面交付が不要とされる場合は、総務省令に委ねられていますし、やはり詳細はそれを待つほかないでしょう。

また、書面の不交付や記載漏れ・不備に関しての民事効の定めもありません。


【追記】H27.9.19.

「書面」に何を記載するのかは、省令告示に委ねられていますが、オプションの扱いなどを巡り、事業者側からはいろいろな意見が出されています。

消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(第15回)

上記の配付資料を読むと、事業者が負担増と消費者に対する十分な対応などから、記載事項の絞り込みを求めていることがわかります。