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2019年9月13日金曜日

脚立やハシゴからの転倒事故

高齢者に限りませんが、やはり危険だし、それ以降寝たきりになるなど、「それまでの健康だった状態」が消失するきっかけになるので、注意したいところです。

自宅の庭の手入れ仕事などの途中でハシゴから落ちて、その後認知症が極端に進んだという事例も見聞しています。
日常生活を営む過程で普通に起きうる事故なので、やはり無理はしないというか、自分の能力を過信しない(低下についても正直に正面から向き合う)ということも重要でしょう。

2018年10月22日月曜日

独居高齢者が賃貸を借りにくい問題

ワンルームの賃貸物件には「単身者限定」というものもありますが、必ずしも高齢の単身者を無条件で含むとは言えない現状は一部にあります。 単身者に賃貸した場合に、賃貸人が心配するのは、賃料支払能力が第一であることは言うまでもないですが、孤独死に代表される「万が一の時の対処」という問題もあるでしょう。

 

2016年9月3日土曜日

成年後見事務円滑化法の成立と施行

成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が、平成28年4月6日に成立(参議院:議案情報:第190回国会(常会))しました。

成立した法律(PDF)参議院サイト


施行は平成28年10月13日です(附則)。

この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。


この法律の逐条解説が「銀行法務21」に掲載されていました。


法務省民事局付 大塚 竜郎
「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の逐条解説」
 (上)  銀行法務21 No.803 (2016年8月号10頁)
 (下)  銀行法務21 No.804 (2016年9月号21頁)

(上)は、郵便物の回送嘱託、開披、交付などが中心です。

(下)は、主に「死後事務」に関する規定のほか、家事事件手続法の改正の解説です。

 (成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
民法 第873条の2
 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。 ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為 (前二号に掲げる行為を除く。)

逐条解説にも書かれているように、死後事務を行う要件は、各号に掲げられた「死後事務」の類型、許可の要否のほかに、柱書きにも書かれています。

1)必要性
   「必要があるとき」
2)時期
   「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」
3)相続人の意思
   「成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き」

そして、各号に掲げられた行為類型のうち「3号のみ許可が必要」ですが、いくつか論点はあります。

(1号)「相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為

Q.1号の行為をするための費用を本人の預貯金口座から捻出する場合の許可の要否

Q.成年後見人の報酬(付与審判後)に充てるために預貯金口座から払戻を受けることの可否

Q.貸金庫の開披の可否

Q.価額低下中の投資信託の解約の可否


(2号)「相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済

Q.2号の行為をするための費用を本人の預貯金口座から捻出する場合の許可の要否


(3号)「その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為 (前二号に掲げる行為を除く。)

Q.火葬等の費用を本人の預貯金口座から捻出する場合の許可の要否

Q.墓地、埋葬などに関する法律9条との関係

1 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)の規定を準用する。

Q.市町村長は、成年後見人が3号に基づき火葬ができることを理由にして、遺体の引取や火葬等を拒めるか。

Q.「死体の火葬又は埋葬に関する契約」に、納骨に関する契約は含まれるか。

Q.「死体の火葬又は埋葬に関する契約」に、葬儀は含まれるか。


以上の論点については、上記の「逐条解説」(上下)のほか、同じ号(銀行法務21 No.804)に計されている下記のものも触れており、参考になります。

●浦山慎介「成年後見関連法の施行と金融実務に与える影響」
 (銀行法務21 No.804(2016号9月号)32頁)


2016年2月23日火曜日

相続と預金をめぐる問題

遺産分割に関する相談を受けて、相談者の方に、理解や納得をしていただくことが大変難しい点に「預金債権等の可分債権は,相続によって当然に分割され,原則 として遺産分割の対象にはならない」というものがあります。
話し合いが煮詰まった時など、「この話を出されても、理解や納得できない」と言われることも珍しくなく、私自身もそういう感じ方は無理のないところだと思いますので、本当に頭の痛いところです。

平成27年4月1日に開催された、法制審議会 民法(相続関係)部会 第1回会議の配付資料になっている「相続法制の見直しに当たっての検討課題」の中に、預金関係として、次の項目があります。
第2 考えられる検討項目
 6 預貯金等の可分債権の取扱い
○ 現行法上,預金債権等の可分債権は,相続によって当然に分割され,原則 として遺産分割の対象にはならないと解されているが,可分債権は,各自の 相続分に応じて遺産を分配する際の調整手段として有用であり,これを遺産 分割の対象から除外するのは相当でないとの指摘もされている。この点につ いて,どのように考えるか。
実際の議論は、次の回で紹介されています。
預金の扱いは、全体の中では「その他の検討項目」という中での位置づけのようです。

(1)第5回会議(平成27年9月8日)

議事録がまだアップされていないのですが・・・、資料は掲載されています。

●部会資料5

この資料の「第1 可分債権の遺産分割における取扱いについて」の項に詳しい内容が記されています。

●委員等提供資料
浅田隆委員「預金債権の可分性の見直しに関する銀行実務の観点からの検討」

この資料は、上記の部会資料5の検討項目などに対応させた表形式になっています。
この部会の委員の中で、唯一、金融機関の方です。ただ、この方も仰っているように他に経済界の人がいないのも特徴です。

(2)第9回会議(平成28年1月19日)

議事録がまだアップされていないのですが・・・、資料は掲載されています。

●部会資料9

この中で「甲案」「乙案」の整理とまとめがされています。
第5回会議での議論が紹介されて、参考にした趣旨の記載があるのですが、第5回の議事録がアップされてないので、どういう議論だったのか、わからないのが残念です。


この資料には、いろいろ考えさせるもの(簡単に是非を決められないもの)が多々ありますが、その中でも(7頁)に次の記載があります次の点は、どういう仕組みをとっても解決しなければならない課題だろうと思います。
当然分割としない預金を代表とする可分債権について、遺産分割を経ずに、各相続人が法定相続分で権 利行使できるという意識が国民にどれほど広まっているか。遺産分割を経て具体的相続 分にしたがった適切な配分がされるよう誘導し、一方で困窮する相続人に負担をかけな い仮払い制度を設けるほうが国民一般の意識に適うという考え方もあろう。
サッサと法定相続分だけでも払出を受けたいということもあります。
預金を調整弁として使う必要がないときだけではなく、単に相続人が行方不明・連絡を無視する・応対しない、という「全員の署名押印、印鑑証明が揃えられない」事態もあり、その場合には、銀行の所定の書類を揃えるが実際には無理だからです。

例えば、成年・未成年を問わず「後見」事案などで、そういった非協力的な相続人がいると、被後見人の生活資金(現金)が足りなくなることもあり、早く払い出ししておきたいと思います。
そういう時には、金融機関の対応は(対応する余地はあるようですが)「杓子定規だなぁ」と思います。

しかしながら、上記のような指摘は無視はできないし、切り捨てられないとも思います。

どちらにしても、相続開始後、遺産分割までの取扱いが、課題になっているので、その部分の仕組みというか手当をどう行うか、が注目されます。



少し前の雑誌の記事をメモしていたので。

金融法務最前線
「親族による預金の無断引出への対応」(濱田広道)
金融法務事情1999号(2014.8.10)4頁)


金融判例に学ぶ営業店OJT預金業務編
「共同相続人の1人からの取引明細開示請求」(須藤克己)
金融法務事情1999号(2014.8.10)148頁)

2015年8月4日火曜日

被後見人の資金を用いた後見人名義の金融取引

以前、金融法務事情1975号の記事を紹介しながら「成年後見人と投資信託」という記事を書きました。
被後見人(未成年も含む)の財産を運用して増やしたいとか、被後見人の将来の活動の幅を狭めないために資金的手当を用意してあげたいという要望は、ある意味では自然なものと言えるでしょう。
成年後見であれば、良い施設に入ったときにかかる施設利用料であったり、未成年後見であれば生活費はもちろんのこと、高校や大学に進学するための「学費その他もろもろ」ということが気になるところだからです。

ただ成年後見であろうと、未成年後見であろうと、あくまでも他人の財産を管理するものですから、いくら裁量とはいえ、後見人の好き勝手に運用したり、目減りさせたり、自己の運用の手段として使ったり、自己資金と混同させてしまったり、してはいけません。
横領として解任事由にとなるだけでなく、刑事事件となることがあります。

また、被後見人や未成年の資金の扱い方次第では、仮名借名口座となり、さらに大きな問題になることがあります。
特に、被後見人や未成年の資産を、後見人名義の口座で運用したりすると、非常に問題です。

こうした口座開設や運用について、証券会社側はどう対応するか、そのあたり下記のSBI証券の解説がわかりやすいと思いましたので、紹介しておきます。

SBI証券の解説
仮名・借名取引とは

2015年7月27日月曜日

成年後見人の権限(改正問題)

読売新聞のツイッターから。
議員立法による実現を目指すようです。


 【追記】

日経の8月11日付け記事にもう少し詳しく載っていました。

成年後見制度進む見直し、死後手続き使いやすく 利用促進へ会議 報酬充実が急務

死後事務は、本人の財産の有無にかかわらず、頭を悩ませる問題で、法的な手当をする必要があるところですが、その範囲などは細部まで詰めないといけないでしょうし、詰めたとしても、現場では問題も出るでしょう。
その際に、修正なり調整がすぐにできるような形にしておくことが望ましいです。
(「なんとなく」とか「文句を言う人はいないから」というだけで事実上すまされている部分はかなりあります。)


2015年1月25日日曜日

成年後見と記録の閲覧謄写

後で整理して追記するためにメモだけ。

●東京地判26.3.11(金法2010号(2015.1.25)72頁)

家事審判官の成年後見人に対する監督ないし記録の閲覧・謄写申請を却下した処分の違法を理由とする国家賠償請求に理由がないとされた事例(確定)



2013年8月9日金曜日

成年後見人と投資信託

日頃気になっていたテーマの記事を目にしたので、メモ。

「実務相談室
成年後見人を相手とした投資信託取引の可否」
金融法務事情1975号(2013年8月10日号)82頁

ここで紹介されている設例は
 被後見人の配偶者が後見人となっており、投資信託を買い増ししたいという申出にどう対応するべきか
というものですが、類似する事例は多いと思います。

監督する裁判所の考えは、もともとリスクのある金融商品の購入は否定的ですし、この点は弁護士会の成年後見研修などに出ていれば毎回披露されるので、成年後見人や監督人は、それに沿って対応することになります。

上記での回答も、家裁の考え方を紹介した上で、
「設問の場合、成年後見人が従来リスク商品で運用を行っており、成年後見人である妻にも投資経験があり、リスクの低い商品で運用する意向であるとしても、成年後見人を相手方として、投資信託を販売することはできないと思われます。」
と記しています。

また、上記で同じく紹介されていますが、「成年後見人名義の既存の投資信託の解約」の問題もあります。こちらの方が多いかもしれません。

新たな損失や危険の発生・創出なのか、その回避なのか、という視点で考えると、答えは出てきそうです。




2013年6月22日土曜日

民法9条但書(民法改正での議論)

一ヶ月ほど前に書いた「日用品の購入その他日常生活に関する行為(民法9条但書)」という小さいな備忘録の記事に、キーワード検索が数件あったようなので、こんな記事にアクセスするキーワードってなんだろう、と参照元の検索エンジンをつらつら見てみていたら、債権法改正に関する議論で、意思能力のことが取り上げられていて、その過程で「民法9条但書」の問題の議論をみつけたので、メモします。

ついでに、中間試案もメモしました。

1.設定されていた問題点と議論
 ~意思無能力と民法9条但書

法制審議会民法(債権関係)部会第10回会議(平成22年6月8日開催)

第2 意思能力
 1 要件(意思能力の定義)
(関連論点)
 日常生活に関する行為の特則
 現行民法は,成年被後見人及び被保佐人がした行為のうち,日常生活に関するものについては,例外的に,行為能力の制限を理由として取り消すことができないとしている(同法第9条,第13条参照)。他方で,現行民法の解釈上,「日常生活に関する行為」であっても意思無能力を理由とする無効主張は可能であるという立場が有力である。
 しかし,意思能力を欠いた状態でされた意思表示であっても,「日常生活に関する行為」に当たる場合には,当該行為を確定的に有効とすべきであり,そのことを明文化すべきあるという考え方がある(参考資料1[検討委員会試案]・25頁)。この考え方は,「日常生活に関する行為」について,意思無能力を理由として法律行為の効力を否定することができるとすると,特に成年被後見人の行為については,意思能力を欠いた状態で行われた行為かどうかが常に問題となるため,取引の相手方にとっては法律行為の効力が不安定になり,成年被後見人自身が日常生活に関する行為を行う必要性に対応できなくなるおそれがあることを理由とする。
 もっとも,この考え方に対しては,意思能力を欠く状態で行われた意思表示の効力を確定的に有効とすると,表意者の保護が十分に図れなくなるおそれがあると指摘されている。例えば,日常生活に必要な物品の売買契約を,不必要であるのに異なる相手方との間で繰り返すような場合には,個々の売買契約はそれぞれ日常生活に関する行為に当たると考えられるため,表意者の保護が図られないことになってしまうという指摘である。
 以上を踏まえ,前記のような考え方について,どのように考えるか。
※ 赤字と下線は、私が付しました。

間引くと、どうもわかりにくくなってしまうので、少々長いですが、設定された問題の中身を正しく理解するため、全文引用しました。


・第10回会議の議事録(PDF版)17頁以下

いくつも発言があり、しかも、どれも重要だと感じてしまって、絞ることにに躊躇も覚えましたが、次の4つに絞ってメモすることにしました。
●岡田委員
日常生活に関する行為について先ほどパンを買うとかいうお話が出ましたが,毎日毎日の食料品を買うだけなのか,それ以外の日常生活に関する行為,例えば実際には布団だとか浄水器だとか,そういう契約のトラブルがとても多いのですが,そういうのは含まないのかによって,全然違ってくるかと思いますが,成年後見制の中で日常生活に関する行為については,被後見人も単独でできることになっていますが,現場では大変苦労されていると聞いています。また消費者問題でいいますと成年後見人が付く割合が大変少なく,明らかに付かなければいけないレベルなのに,一人で生活しているという人が多いものですから提案にあるように確定的に有効というのは是非やめていただきたいと思います。
●潮見幹事
それから,四点目は,日常生活に関する行為の特則の部分なのですが,一点だけ気になりますのは,検討委員会試案のコメントに付いていたと思いますが,日常の生活に関する行為を当事者を別として数々繰り返して行うといった場合に,日常生活に関する行為の特則という形でこの規定を設けたとき,もちろん,これは別の制度,ルールで対処するという可能性はあるのでしょうけれども,果たしてそういうのでいいのかということが,問題としては残っているのではないかと思います。その部分は,少し慎重に検討をされたほうがよいと思います。
●道垣内幹事
岡田委員がおっしゃったことは何か少し分かるような気がしまして,それというのは,成年後見制度が発動されている場合の9条ただし書それ自体にも問題があるとお考えでしょうが,成年後見人がついているという場合には,一定のコントロールをしているということが考えられるので,9条ただし書の規律でもよいかもしれないのに対して,成年後見の発動がされていないで,意思無能力状態にある場合にはそういうコントロールもないので,日常生活に関する行為というものに関して,特則を認めるのはよくないだろうということだろうと思って伺いました。
●松本委員
この問題を考えるときに,成年後見制度と意思無能力制度をどう関係させるのかという部分を少し考えておく必要があるのではないか。つまり,成年後見に早く移行すべきなんだけれども,時間的に間に合わない人を意思無能力という形で救済をするというつなぎの制度として考えるのか,それとも,鹿野委員がはっきりおっしゃっていたと思うんですが,現在の制度はかなり問題がある,特に日常生活に関する行為は問題があるんだという認識のもとに,意思無能力のほうをうんと拡張していく形で,制限行為能力との重畳適用も構わないとして,意思無能力でもっと処理しようという方向なのかという話ですね。そこをどちらで考えるかによって,効果にしろ,要件にしろ,少し違った位置付けが出てくるのではないかと思います
※ 赤字は、私が付しました。

ここでの議論は、あくまでも意思無能力を無効としつつ、「日常生活に関する行為」に当たる場合には,確定的に有効として、明文化すべきか、という点でした。

前回の記事で取り上げた、現在進行形の成年後見事務にとっての課題である、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」(民法9条但書)とは何か?に対する答えを議論するものではありませんでした。
その点は、少々期待しながら読んでいたので、(メインテーマではないので仕方のないことですが)残念ではあります。

ただ、「現行の民法9条但書は、そもそも問題のある規定なのだ」という見解があることを知ることができました。

部会の議事録を読んで、なかなか議論を頭の中で整理できないでいたところ、最後に松本委員の発言をみて、少しスッキリしたところです。


2.中間試案

「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」(平成25年2月26日決定)

 ・ 【参考】民法(債権関係)の改正に関する中間試案(平成25年5月2日補訂)

 ・ 【参考】民法(債権関係)の改正に関する中間試案(概要付き)(平成25年5月2日補訂)

 ・ 【参考】民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明(平成25年5月2日補訂)

本年公表された中間試案では、次のように整理されていました。
第2  意思能力
 法律行為の当事者が,法律行為の時に,その法律行為をすることの意味を理解する能力を有していなかったときは,その法律行為は,無効とするものとする。
 (注1) 意思能力の定義について,「事理弁識能力」とする考え方や,特に定義を設けず,意思能力を欠く状態でされた法律行為を無効とすることのみを規定するという考え方がある。
 (注2) 意思能力を欠く状態でされた法律行為の効力について,本文の規定に加えて日常生活に関する行為についてはこの限りでない(無効とならない)旨の規定を設けるという考え方がある。
この点に関する「補足説明」10頁。
反対の多かった意思無能力でも日常生活に関する行為は有効とする特例は設けないということに、中間試案では落ち着いたようです。
5 意思能力を欠く状態にある者が日常生活を営むことができようにするため,民法第9条ただし書,第13条第2項ただし書と同様に,日常生活に関する行為は意思能力を欠く状態でされても有効とする旨の規定を設けるという考え方があり,これを(注2)で取り上げている。民法第9条ただし書等は,制限行為能力者の行為について,自己決定の尊重及びノーマライゼーションの理念(障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという理念)に基づき,制限行為能力者が日常生活を送ることができるように設けられた規定であるが,日常生活に関する行為を自ら行う必要性は意思能力を欠く者についても同様にあてはまるという考え方である。
 しかし,民法第9条ただし書等は,平成11年改正の立案担当者によれば,成年被後見人が日常生活に関する行為をした場合でも,意思能力がなかった場合はその行為は無効であるという理解を前提に立案されており,学説も同様の理解に立つ見解が有力である。また,意思能力を法律行為ごとにその意味を理解する能力と捉えるのであれば,現に日常生活に関する行為を行った者がその意味すら理解する能力を欠いていたと言える場合は稀であると考えられる。
 このように,日常生活に関する行為であっても意思能力すら欠く状態で行われた場合は無効であると考えられていること,日常生活に関する行為が意思能力を欠く状態で行われることは現実にはまれであると考えられることから,意思能力については民法第9条ただし書のような規定を設けないという立場を本文に記載し,日常生活に関する行為の特例を認めるという考え方は,注記するにとどめている。
※ 赤字と下線は、私が付しました。



(参考)
・民法(債権法)改正検討委員会編
  「詳解 債権法改正の基本方針Ⅰ序論・総則」(商事法務)号86頁以下。

2013年5月23日木曜日

日用品の購入その他日常生活に関する行為(民法9条但書)


民法9条
 成年後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。

1.「日用品の購入その他日常生活に関する行為」の意義

(1)考え方
   ~ 大きく2つの方向性があるようです。

民法761条「日常の家事」の解釈を参考にする見解
  →「日常生活に関する行為」の範囲は広くなる。
  (背景)
    自己決定の重視

限定的に解する見解
  →日常生活を送るのに必要不可欠と考えられる行為に限られる。
  (背景)
    成年被後見人の生活遂行を可能にするための便宜的規定にすぎない、と考える。

【参考】
・山本敬三「民法Ⅰ(第二版)」57頁
・佐久間毅「民法の基礎1総則(第3版)」92頁
・民法(債権法)改正検討委員会編
  「詳解 債権法改正の基本方針Ⅰ序論・総則」(商事法務)号86頁以下。


(2)立案担当の解説
   ~ 岩井伸晃:金融法務事情1565(1999.12.15.)号15頁(二2(3)オ) ~
 取消権の対象から除外される「日常生活に関する行為」とは、基本的には、民法第761条の「日常の家事に関する法律行為」の範囲に関する判例(最一小昭44・12・18民集23巻12号2476頁)の解釈と同様、本人が生活を営む上において通常必要な法律行為を指すものと解される。その具体的な範囲は、各人の職業、資産、収入、生活の状況や当該行為の個別的な目的等の事情のほか、当該法律行為の種類、性質等の客観的な事情を総合的に考慮して判断するのが相当であると考えられる。
 典型的な例としては、法律の明文として掲げられている「日用品の購入」(食料品・衣料品等の買物)のほか、電気・ガス代、水道料等の支払、それらの経費の支払に必要な範囲の預貯金の引き出し等が挙げられる。
※ 挙げられている具体例
 ⅰ 食料品・衣料品等の買物、
 ⅱ 電気・ガス代、水道料等の支払、
 ⅲ それらの経費の支払に必要な範囲の預貯金の引き出し

これは、上記①民法761条の解釈を参考にする見解に属するものと言えそうですが、改正の際にはいろいろな要素が取り上げられており、自己決定権だけを重視するものではないようです。(例えば前掲の立法担当の解説では「自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を旨として、成年後見制度の改正のための法改正が行われたものである。」と記されています(岩井伸晃:金融法務事情1565(1999.12.15.)号6頁)。)。


【参考】
①成年後見制度の改正に関する要綱試案(NBL640号51頁)
②「成年後見制度の改正に関する要綱試案の解説―要綱試案・概要・補足説明」(きんざい。1998.4.)
民法の一部を改正する法律案等要綱の概要(平成11年2月 担当:法務省民事局、法務省サイト)


2.文献(出版年次順)

(1)H12.12
 .岡本均「身上配慮と身上監護-現場で求められる身上監護の問題点-」
 (実践成年後見No.1・154頁
 「日用品の購入その他日常生活に関する行為」についての概念規定が明確ではない。これと類似した民法上の用語としては「日用品の供給」(民法306条・310条)、「日常の家事」(民法761条」などがある。「補足説明」は、「日常の家事」の範囲に関する解釈と同様、判例の集積により解釈の基準が形成されていくと思われるとしているが、現在、2割司法。3割司法と言われ、裁判外での解決が多く行われている状況のもとで、はたして必要な判例の積み上げが早い機会にできるのであろうか。可能な限り細かい「概念」の規定が望まれる。

※赤字と下線は、私が付しました。

※ 概念の不明確性の問題は、文中で指摘されたように、解決というよりも、成年後見事務を担う関係者の、現場での日常的な模索、判断、処理に委ねられているとどまり、それが統一的な指針として共有される等まで至らず、また、飛び抜けて問題にならない限り、訴訟的解決に進展するというものはないのが実情ではないかと思います。

(2)2006.12.
新井・赤沼・大貫編「成年後見制度 法の理論と実践」96頁(赤沼康弘)
 日常生活に関する行為が取消の対象から除外されたのは、事理弁識能力を一時回復しているときには日常の買い物等を自ら行うことができるような制度とすることが、ノーマライゼーションの理念に添うからであり、日常の買い物などを行いうる能力の者も後見の対象となるという趣旨ではない。
 日常生活に関する行為とは、成年被後見人の生活状況にあわせて判断されるものであるが、食料品、衣料品、雑貨など日用必需品の購入、水道、光熱費の支払、公共交通機関の利用などが考えられる。なお、類似の規定として、夫婦の「日常の家事」に関する民法761条があり、その解釈が参考になる。
※ノーマライゼーション
 「障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会をつくるという理念で、北欧諸国で提唱されて以来、それらの国々の福祉政策の基本理念となるとともに、1970年代のアメリカの福祉政策を推進する理念となるなど、現在では国際的に定着した理念であるとされている。」という説明がある。岩井伸晃:金融法務事情1565(1999.12.15.)号6頁。

(3)H23.7.
  片岡武「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」11頁
【視点】
 日常生活に関する行為が除外されたのは、生活必需品の購入に関してまで後見人の取消権が及ぶとするのは被後見人の自己決定権に対する過剰な介入であり、残存能力の活用の点からも問題があると考えられたためである。
ウ「日常生活に関する行為」の内容
 民法761条の日常の家事に関する法律行為に関する判例の考え方と同様に、個々人の資産、収入、生活状況等、具体的な事情を考慮して判断されるものと解されている。
※本書では、具体例、具体的な判断基準や指針は特に示されていない。


3.自己決定と民法9条但書、意思無能力による無効

結論(9条但書でも意思無能力無効を認める)は変わらないと思うのですが、頭の整理がつかないので、そのためのメモ。

・佐久間前掲書92頁
 日用品の購入その他日常生活に関する行為は、成年被後見人も単独でおこなうことができ、取り消すことができない(9条ただし書。なお、成年被後見人が意思能力を有しなかったときは、無効である。)。
[補論] 例外の趣旨
 この例外は、成年後見人の自己決定を尊重して設けられたものだとされている。もっとも、後見は日常の買い物すら満足にできない者を対象としており、成年被後見人について自己決定を語ることができるのか、疑問である。むしろ、この例外は、成年被後見人については実務上の便宜が重視された結果だと思われる。この例外を認めておかないと、成年被後見人が日用品の取引すら拒否される恐れがあるからである。
・民法(債権法)改正検討委員会編87頁「提案要旨1」
「成年被後見人についても、一定の範囲ではなお自己決定による法律行為が可能であり、9条但書は「日常生活に関する行為」という限定的は範囲で自己決定を認めたものである。これによれば、成年被後見人が同時に意思無能力であるとされる場合には、もはや自己決定を語ることはできず、「日常生活に関する行為」についても、意思無能力を理由とする無効主張は可能であると考えられる。現民法における解釈論として、このような立場が有力である。」
・同上88頁「解説2」
「現行法9条ただし書の趣旨は、一方において、成年被後見人についても限られた範囲で自己決定を行うことが可能であり、その自己決定を尊重する点にあると考えられるが、現民法7条に定める後見の審判開始の要件が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とされていることを考慮すると、自己決定を語りうるのは例外的な場合であろう。」

【追記】
民法9条但書(民法改正での議論)」という備忘録をまとめました。(2013年6月22日)