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2017年4月12日水曜日

後払いと未成年による利用など

TLに流れてきた下記のライブドアニュースのリツイートの「未成年者でも簡単に利用できる『ツケ払い』のリスク」という部分が目にとまり、検索してみると少し話題になっていたので、調べてみました。

ライブドアニュースの記事は「デイリー新潮」のものでした。
デイリー新潮のツイートの方には「未成年者でも簡単に利用できる」の文字はなく、単に「肝心の消費者が恐ろしいリスクを背負いかねない」とだけありました。

デイリー新潮のサイトにある記事はこちら↓。
ZOZOTOWNの広報、渥美陽子弁護士、アナリストの森永卓郎氏の各コメントが紹介されています。

記事の見出しは少々煽った感じもしたので、まずは私自身が知らない「仕組み」を調べてみようと思い、規約などを整理してみました。

1.仕組み

「ツケ払い」ができることは、各商品のページの値段の横に「ツケ払いできます」と表示されることでわかり、かつ、「詳細」を押すと「ツケ払い」の説明(「ツケ払いによる代金の請求、並びに請求に関してご連絡が必要となる場合、GMOペイメントサービスがおこないます。」)も表示されました。

もっとも、ショッピングカートには「ツケ払いをご利用いただくには会員登録が必要となります」と記載されていました。

「ツケ払い」の詳細は、ZOZOTOWN内ではなく、GMOペイメントサービス株式会社のサイト内の下記ページに記載がありました。

このページは、ZOZOTOWNからだと、「ヘルプ」「お問合せの多いご質問」内にある「ツケ払いの請求書を紛失したのですが、どうしたらいいですか?」にリンクが貼ってありました。

上記のページ下方にある「注意事項」にツケ払いの説明詳細がありました。
■【ツケ払い(GMO後払い)】について
【ツケ払い(GMO後払い)】サービスは、GMOペイメントサービスがご購入店からご注文毎に売買代金の債権譲渡を受けて、請求書の発行と代金の回収を行います。サービスの提供に必要な個人情報(氏名・住所・メールアドレス等)は、ご購入店と弊社間で相互に提供するものとします。また、業務の範囲内で委託先に提供するものとします。弊社の個人情報の利用および取り扱いにつきましては、「個人情報保護方針」及び「個人情報の取扱について」をご確認ください。
以上の事項に承諾の上、【ツケ払い(GMO後払い)】をご利用ください。
とあります。
概ね記事に紹介されていたものと同じでしたが、特徴を整理すると次の3点でしょうか。
①売買代金の債権譲渡であること
②注文ごとも①が行われること
③購入者は規約を承諾して利用すること(債権譲渡の事前承諾となる)

検討を要するとしたら③の点で、異議をとどめない承諾(異議なき承諾)をすることになる点です。
もっとも「異議をとどめた承諾」とはどういうものか、はハッキリとしていない面はあります。
通信販売にはクーリング・オフがありませんので、テーマ外ですが、この異議なき承諾によりクーリング・オフが切断されることがありえます。

※東京地裁平26.10.3判決(判例タイムズ1413号279頁)
 債務者が異議をとどめない承諾をした場合であっても,債権の譲渡人に対抗することができた事由を債権の譲渡人に対抗することができるかどうかにつき個別に判断した事例

その事例の紹介を江木弁護士がブログにまとめています。
化粧品「解約」したのに高額請求 女性ら次々訴えられる
(弁護士江木大輔のブログ)


2.未成年の利用
ZOZOTOWNサービス利用規約
第2条 本サービスの利用
1. (略)
2. 未成年の会員は、適格な法定代理人の事前の同意を得なければ、本サービスを利用することができません。
第5条 会員登録
1. (略)
2. 未成年者は、適格な法定代理人の事前の同意がなければ、会員登録申請をすることができないものとします。

一見したところ、よくある利用規約と同じ書きぶりに思われます。
会員登録をする際には、年齢の入力が(共通サービス利用規約第5条)にて求められているのですが、法定代理人の事前の同意をどのように確認するかは、結局、登録画面の作り方やオンライン内外での同意の確認方法によるようです。
現実に同意がなくても登録して使えてしまう余地はあるかもしれません。
その意味では「問題性」も同じでしょう(問題性を解消する特別な仕組みは見当たらない印象)。

*)未成年者の利用に関する具体的な事案での解決の困難さについては、森亮二弁護士が書かれている「オンラインゲームをめぐる近時の法的問題点」(特集 オンラインゲームと消費者トラブル 月刊国民生活ウェブ版2017年1月号(No.54))が参考になります。

「ツケ払い」の利用限度額は5万4000円のようです。
金額の面で、いわゆる処分を許した財産(お小遣い。これも法定代理人の同意)の範囲での買い物と言える場合もあるとは思いますが、お小遣いとは?とか、未成年者の年齢・成熟性に応じた議論や検討はより深く求められるでしょう。

また、単純な後払いとも異なる「使いやすい」仕組みであり、そうした決済方法の利用による売買まで法定代理人が同意していたか(利用可能な金額面で、成年と未成年との間に違いが設けられているわけではなさそうです。)、は慎重な検討を要すると思います。

**)「金額」の問題については、紀藤正樹弁護士がツイート(追記しました)で「大人の小遣い統計」「子どもの小遣い統計」を示して「大人も子ども一律5万4000円」という利用限度額がもつ問題性の指摘が参考になります。

「ツケ払い」は、下記のように与信審査をしているようですが、クレジットカードと同等の審査なのかは、審査基準を開示していないので、画面上からはわかりません。
ZOZOTOWN ツケ払い ご利用の購入者様へ 注意事項
■ご利用に際して、所定の審査がございます。
ご注文毎に与信審査をさせていただき、結果によっては、【ツケ払い(GMO後払い)】のご利用をお断りすることがございます。
※与信審査の基準につきましては、開示しておりません。また、審査結果の理由の開示はいたしかねますので、予めご了承ください。
 高額のご注文や短期間に複数のご注文をされた場合などに、不正利用防止のためご本人確認をさせていただくことがございます。審査結果をご購入店に開示する場合がございますので、予めご了承ください。審査後であっても不正利用等が発覚した際は、必要に応じて荷物の受取人様へご連絡をさせていただくことがございます。

3.補足①~商品の所有権
■商品の所有権について
 本サービスはご購入店から弊社が売買代金の債権譲渡を受け、ご購入店に代わりましてお客様へ売買代金の請求をさせていただきます。お客様のお支払が完了するまでは、商品の所有権は弊社にございますので、予めご了承ください。
GMOペイメントサービス株式会社のサイト内の「ZOZOTOWN ツケ払い ご利用の購入者様へ(はがきタイプ請求書)」には、上記の条項がありました。

「商品の所有権は弊社にございます」という点ですが、GMOペイメントサービス社は商品の売主ではないし、契約締結上の地位の移転ではないので、代金支払が完了するまで売主たるZOZOTOWNに留保された所有権が、GMOペイメントサービス社からZOZOTOWNに対して債権譲渡の対価が支払われた時に、一緒に移転するという構成なのでしょう。
もっとも、この移転を、法的にどう説明するかは、かなり難しい・・・。

例えば、立替払することにより、弁済による代位が生ずる結果、販売社が代金債権を担保するために留保していた所有権は、販売会社の買主に対する代金債権とともに法律上当然に移転し、立替払によって取得した留保所有権(法定代位的構成)。
もっとも、この点は、平成22年の最高裁で、販売社から移転を受けて留保する所有権が、立替金等債権を担保するためのものであることは明らかである。立替払の結果、販売社が留保していた所有権が代位により移転するというのみでは、残代金相当額の限度で債権が担保されるにすぎないことになり、本件三者契約における当事者の合理的意思に反するものといわざるを得ない、と述べていて、必ずしも代位的構成とも言えないようです。

この点については、下記の文献がネットでも参照できて役立つと思います。
石口 修
千葉大学法学論集 第28巻第1・2号(2013)


4.補足②~ツケ払いの期間(2ヶ月払)

「ツケ払い」では、商品の購入には「カード等」の提示を要しないので、「個別信用購入あつせん」(割賦販売法2条4項)に該当するか?ですが、GMOペイメントサービス社が購入者から代金相当額を受領する時期として定められたのは「2ヶ月先」とされているので「個別信用購入あっせん」に該当しません。
「2ヶ月先」は「売買契約が締結した時から二月を超えない範囲内」である必要があります。

ツケ払いについてコメントしているツイートは結構ありましたが、そのうち次を紹介しておきます。別のツイートでは代位的構成での説明もされていました。

5.補足③(追記)

【2017.4.13.追記】
山本一郎氏の記事が文春オンラインに掲載されていました。

【2017.4.18.追記】
池本誠司弁護士のコメントが紹介されている記事がありました。
記者のまとめではありますが、割賦販売法、貸金業法を含めた、池本先生の整理は、わかりやすいと思います。
この他に、ツケ払が遅れたということで弁護士名での督促状が来たという写真付きのツイートもありました(封筒に記載された事務所は実在する事務所ですが、本当にツケ払の関係なのか真偽不明なのでツイートの紹介は控えました)

【2017.5.5.追記】
紀藤正樹弁護士がツイートでコメントされていました。
連続ツイートですが、わかりやすく整理されています。
大人と子どもの利用制限額が同じというのは重要な指摘だと感じます。
上記の続きはこの3つ。
(4)https://twitter.com/masaki_kito/status/860423940644130817
(5)https://twitter.com/masaki_kito/status/860425088792788992
(6)https://twitter.com/masaki_kito/status/860427894048161792

2017年4月2日日曜日

債権譲渡、異議なき承諾、クーリング・オフ

民法改正案の採決のニュースが流れて、以前の記事ですが、廃止される異議なき承諾関係で、まとめていたものを載せ忘れていたことを思いだし・・・。



江木弁護士のブログが簡潔にまとめられており、わかりやすいです。

化粧品「解約」したのに高額請求 女性ら次々訴えられる」(弁護士江木大輔のブログ)

ここで問題になっている「異議なき承諾」(民法468条1項)は、民法(債権法)改正により廃止されます。

(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
第468条
 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

民法改正案では
 「第468条及び第469条を次のように改める。」
として
 (債権の譲渡における債務者の抗弁)
第468条
1 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
2 第466条第4項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
(以下略)
とされています。

2017年4月1日土曜日

NHK受信料訴訟

つい先日、ビジネスホテルチェーンに対する大変高額(巨額と表現してもいいでしょう)の支払を命じる判決があり、検討課題が多いと思われるこの分野の訴訟ですが、こんなニュースがありました。
この記事で紹介されている「法務省訟務局」は法務省サイトにページがあります。

また、意見照会についても、上記の「訟務制度とその役割」のページ中に内容は短いですが、
「紛争の予防(法律意見照会制度)」
という項目があります。
訟務を取り巻く最近の情勢」「訟務事務の内容」にも紹介や位置づけの図があります。

大法廷回付のニュース(東京新聞2016年11月3日)
この係争に関する裁判所の判断に関する、まとめの記事がありました(2017年1月17日朝日新聞)。
町村教授のコメント(ブログ)がありました。