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2018年1月8日月曜日

定期購入契約を巡る問題

いわゆる「定期購入契約」については、消費生活相談を中心に、以前から問題が指摘されていたところです。

1.2016年

2016年の報道は下記。

元になっている国民生活センターの2016年のリリースは下記です。
これをみると、2015年になり突如増加したことが一目瞭然です。


このころ各地の消費生活相談窓口でも同じような情報提供がされていました。例えば島根県消費者センターのツイート。

2.2017年

(1)訴訟

2017年1月には、京都消費者契約ネットワークが(景品表示法30条に基づき)こうした表示の差止めを求める訴訟を提起し、同年6月に勝訴的和解が成立したとのことです。
詳しくは、京都消費者契約ネットワークのサイトにある「健康食品関連ー申し入れ・差止請求」のページに報告等が掲載されています。

(2)報道など

2017年8月には、平成28年度に京都府消費生活相談窓口に寄せられた相談件数の紹介が報道されています。(産経ビズのツイート)


国民生活センターは、翌2017年にも第二弾のリリースを出しました。
これによれば、2016年は2015年の2.5倍、2011年の27.5倍に増加しており、増加具合が尋常でないことがわかります。


2017年11月には、内閣府政府広報オンラインでも、このトラブルについて紹介しています。(同ツイートより)

3.2018年

今年に入って、下記のツイートにあるように「お試し価格」にまつわるトラブルを新聞などが報じています。

(毎日)

(東京)


4.法改正など

【2018.10.17.補正】

(1)改正特定商取引法施行規則第8条第7号

平成28年の特定商取引法関係の改正を踏まえ「定期購入契約」に関連するものが新たに盛り込まれました。
具体的には「通信販売の広告表示事項」の細目部分を定める特定商取引法施行規則第8条に新たに第7号(下記)を追加して「定期購入契約」の問題への対応をはかることになりました(平成29年6月30日公布)。

7 商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件

販売条件に関する表示の関係では「売買契約を2回以上継続して締結する必要のあるもの」が定期購入契約の類型とされたわけです。

(2)通信販売(いわゆる定期購入契約)Q&A

2017年12月には、消費者庁サイトに下記が掲載されました。

通信販売(いわゆる定期購入契約)Q&A(平成29年12月20日)

掲載場所は、消費者庁の「平成28年特定商取引法の改正について」というページにある「5.改正法に係るQ&A」です。

詳しい内容は、上記の "Q&A" のPDFを見ていただくとして、定期購入契約とされる契約の類型には、①期間の定めのない定期購入契約の場合、②1回限りを含む期間の定めのある定期購入契約が自動的に更新されるものである場合、の2種類があることを示し、それらに対応する考え方を示しています。

なお、この "Q&A" で触れられている「ガイドライン」とは
インターネット通販における「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドライン」(平成29年11月1日改正)
です。

このガイドラインには「Ⅱいわゆる定期購入契約の場合」の項が新たに追加され、画面例と共に、特定商取引法14条1項2号省令16条1項各号に抵触するか否かに関して、説明がされています。



2018年1月2日火曜日

齋藤雅弘「電気通信・放送サービスと法」(弘文堂)

平成27年改正により消費者保護規定が大幅に加えられ、昨年施行された電気通信事業法、放送法を把握する新しいものは、消費者保護ルールに関するガイドラインのほかは、特殊な論考を除き、入手しやすい市販書籍としてこれに触れているものは、曽我部ほか「情報法概説」(弘文堂)でした。
ただ、この「情報法概説」はプロパーの解説書ではないし、その後の各種政省令やガイドラインのフォローまではしていません。
電気通信事業法等の改正に至るまで議論の経緯(何が問題だったのか、どういう手当をすることになったのか、問題は解決したのか、残されている問題は何か、等々)や、各種規定を横断的にまとめたものが見当たりませんでした。
もちろん、各種の委員会やWGの議事録、報告書はほとんどがウェブ上で公開されているので、それを読めばよいとは思いますし、その作業はとても重要です。
しかし、全てを把握するには量も多く、一つの委員会やWGで議論されていたわけではないうえ、関係する団体やそれぞれが出しているものもあり、過去の経緯の全体を鳥瞰するには負担感が大きかったです。

そのような状況下で下記の書籍が刊行されたと知りました。
著者の齋藤先生は、電気通信サービス関係の各種の委員会やWGの委員を務められており、それ以外にも研修やシンポなども担当されています。

入手できたので拾い読みしてみたところ、平成27年の事業法改正に至るまでの経緯も詳しく記載されておりますし、電気通信サービスに関する消費者問題に関わる新しい法を網羅していて、460ページと大部ですが、とても役立つ書籍です。
独力で各種の議事録、報告書、等々を全部まとめて整理する作業を節約できるだけでもとても助かるものです。
電気通信事業法の最新の改正(省令、ガイドラインも含め)に対応し、かつ、消費者保護関係に関して詳細な記載のある(法令の条項も記載がある)、コンメンタール的な書籍はないので、消費者保護ルール規定が盛り込まれた電気通信事業法に関する解説書、現時点では、この書籍だけが頼りになるものと言えます。