ページ

2012年9月7日金曜日

通信障害、スマートフォン(データ通信)と制御信号

時折発生する「通信障害」が起きる要因がはじめてよくわかりました。

2012年1月25日のFOMA音声・パケット通信サービスがご利用しづらい状況について
 (ドコモ報道発表資料)

 上記のPDF資料

このPDF資料にある「4.制御信号増加の要因」の図解はわかりやすいです。
移動通信では、通信を行っていない場合、周波数有効利用のために無線リソースを解放するが、コミュニケーションアプリ(VoIP/Chat等)の普及により、端末がデータ送受信することによる、端末~交換機間で接続・解放のための制御信号が急増している。

コミュニケーションアプリをご利用されていない場合
端末を操作していない状態でも、AndroidOS機能により28分毎に制御信号が発生

コミュニケーションアプリをご利用されている場合
OS機能に加えてアプリケーション毎に断続的に制御信号が発生
比較的短時間に制御信号が発生(3~5分に1回)

ただ、上記資料は、通信事業者の報道発表資料で、説明がやや省略されていた基本的な部分もあります。

この点についての解説として、下記のものをみつけました。
図解がとてもわかりやすかったです。

●「連載 最新のネットワーク技術」日本データ通信機関誌186号26頁
 井上伸雄:
 「スマートフォン時代の携帯電話ネットワーク  …データ通信量が大きいのが特徴
 
一般社団法人日本データ通信協会のサイトで、同機関誌のバックナンバーのPDFが掲載されています。

【追記】
 ただ、掲載するバックナンバーの対象が少なく、どんどん古いものから消されていくようなので、186号のPDFは、現在はみられないようです。

この解説では、無線チャネルの解放も、次のチャネル確立という動作との連続でみた場合、制御信号の増加原因となることが記されている。
 スマートフォンが従来の携帯電話と異なるもう1つの点は、複数のアプリがバックグラウンドで頻繁に通信を繰り返すなど、通信の頻度が高いことで、そのため制御信号が増大してしまうことだ。制御信号とは「通信の開始・終了」「端末の現在位置」「端末の基地局間の移動」などの情報をネットワーク側に通知する信号で、この制御機能を処理できないと正常な通信ができなくなってしまう。
      ・・・(中略)・・・
 スマートフォンの場合は無線通信特有の問題がある。無線通信では1ユーザが電波を占有してしまうことがないように、データを送信し終わると無線チャネルを解放し、次のデータを送信するときに再びチャネルを確立する、という動作を繰り返している。
      ・・・(中略)・・・
 この無線チャネルの状態が変わるときに端末とネットワークの間で制御信号がやりとりされるが、制御信号は1個ではなく、例えば通信の開始時にはおよそ30個もの制御信号がやりとりされる。データ通信では、短いデータを間隔を空けて何回も送ることが多く、無線チャネルの確立と解放を短時間のうちに何回も繰り返すため制御信号が増えてしまう傾向がある。
※(一般社団法人日本データ通信協会のサイト

ユーザが全く意識していないところ、意識していない通信を、たくさん繰り返し行っている、ということですね。。。
しかもユーザが増えれば増えるだけ、信号が増える・・・。


2つの資料を併せて読むと、全体がスッキリわかりました。



2012年9月6日木曜日

オンラインゲームと課金

ゲームにおける「課金」の持つ意味などを理解する上で役立ったと最近感じた資料。


1.日本デジタルゲーム学会2012夏季研究発表大会

(1)大会公式サイト

(2)アフタヌーンセッション
小山友介(芝浦工業大学)「ソーシャルゲームの行動経済学的解釈」講演

動画

何となく感覚で受け止めていたところ(自分で勝手に思っていたところ)が明示されて、スッキリした。とても参考になるものだった。



2.「ゲームの売上の最大化」 (遠藤雅伸公式blog「ゲームの神様」)

 上記1の講演内容の紹介をしている記事。

 動画をみられない場合でも、この記事で講演の内容は、かなり把握できます。

 上記1の講演でも紹介されていた図表は、やはり、わかりやすいです。

 オンラインゲームに関する問題は、やる人とやらない人のギャップが大きく、ともすると噛み合わない感覚的な意見のぶつけ合い(互いに「お前が悪い」的なもの)になりがちかと思います。

 ただ、小山先生の講演資料などを基礎にして、ユーザ(消費者)側からだけではなく、事業者側からの「売上をどう獲得するか」という視点が持てれば、単なる感覚としてではなく、複眼的に問題を捉え、解決策を探ることができるように思います。
 特に、このブログの末尾にある、次の部分は、考えるヒントになりそうです。
ゲーム販売の方向の変化は、ゲーム制作が完成に向かって収束するものではなく、サービスを継続するために作り続けるようにシフトさせています。そんな中でも、ゲームメカニクスの面白さで支持されるゲームが育っているのも事実です。ゲームは常に技術の進歩に従ってパラダイムシフトしてきましたが、ビジネスとして成り立たせるためには、手間が掛からず、余計に払うことのない優れた課金システムが必須なんでしょうね。
なぜゲームの課金に関する問題が生じるのか、なぜ課金問題が大きくなっていくのか、なぜ課金問題がなかなか止められないのか、を考えるヒントになるものです。


3.中嶋謙互「オンラインゲームを支える技術」(技術評論社2011年)

 この中の次の項目

  • 「2.4 オンラインゲームのビジネスとしての側面」にある「多くの課金オプションを提供したい~課金決済の変化 ゲームポイントの登場-課金細分化 リアルタイム化の実現」
  • 「6.5 課金決済関連の補助的システム」


偶々目に留まった書籍だったが、前から気になっていた点に関する説明があったので。


4.事業者の対応の例など

(1)原田由里「事例で学ぶインターネット取引 第1回 オンラインゲーム」
      (ウェブ版月刊国民生活 創刊準備号No.2(2012年6月号


(2)一般社団法人オンラインゲーム協会(JOGA)
   ●「オンラインゲーム安心安全宣言
      課金に関しては1(3)で次の記載があります。
未成年者の利用者については、意図しない過度な課金を未然に防ぐべく、コンテンツの特性に基づき利用料金の上限を設定しています。 
【追記】

(3)一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)
   ●コンプリートガチャ トガチャ トガチャ トガチャ等に関するガイドライン
   ●ゲーム内表示等に関するガイドライン
   ●リアルマネートレード対策ガイドライン

2012年9月5日水曜日

DPI(ディープ・パケット・インスペクション)

DPIについて整理するためのメモ。

以前も高木浩光氏の記事(「DPI行動ターゲティング広告の実施に対するパブリックコメント提出意見」)をみつけたりして、2年前に、備忘録「DPI技術を活用した行動ターゲティング広告」(2010年6月4日)にしていたが、忘れていた・・・

少し整理して、いくつかウェブ上の情報を追加してみた。


1.総務省の報道発表(平成22年5月26日)

●総務省「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言」(平成22年5月)
 ・提言のPDF

 この提言54頁以下(違法性阻却は57頁以下)に詳細が記されています。
6.ディープ・パケット・インスペクション技術(DPI 技術:Deep Packet Inspection)を活用した行動ターゲティング広告について

(中略)

④違法性阻却が認められるか
 電気通信事業者による通信の秘密の侵害行為が正当業務行為となる場合については、実務上の運用事例を通じて一定の考え方が整理されてきている。これまでに正当業務行為が認められた事例は、ア.通信事業者が課金・料金請求目的で顧客の通信履歴を利用する行為イ.ISP がルータで通信のヘッダ情報を用いて経路を制御する行為等の通信事業を維持・継続する上で必要な行為に加え、ウ.ネットワークの安定的運用に必要な措置であって、目的の正当性や行為の必要性、手段の相当性から相当と認められる行為(大量通信に対する帯域制御等)といったものが挙げられる。こうした事例の根底にある基本的な考え方は、国民全体が共有する社会インフラとしての通信サービスの特質を踏まえ、利用者である国民全体にとっての電気通信役務の円滑な提供という見地から正当・必要と考えられる措置を正当業務行為として認めるものである。

 こうした基本的な考え方に立って検討すると、ISP による DPI 技術を活用した行動ターゲティング広告の実施は、パフォーマンスの高い広告を配信することや、そのために利用者の嗜好を把握することを目的としておりISP による電気通信役務(電気通信設備を用いて利用者をインターネットに接続させる役務)にとって、必ずしも正当・必要なものとは言い難く、正当業務行為とみることは困難である。
※赤字と下線は私が付しました。


2.夏井高人先生のブログ

世界ではディープパケットインスペクション(DPI)が日常的に実施されている
例えば,通信会社AがDPIを実施しているとして,その通信会社Aが通信当事者となっている通信もまたどこかの通信会社Xが実施しているDPIで完全解析されている可能性が高いことから,自分だけが例外的に傍受されていないということは基本的にあり得ないことになるだろう。
この夏井先生の指摘は留意しておきたいと思った。
よく考えてみると、全くそのとおりではないかと思う。


3.山根義則弁護士の記事

DPI技術による行動ターゲティング広告


●山根義則弁護士
帯域制御(通信データの取扱い)
ディープパケットインスペクション(DPI)による帯域制御のことが書かれている。


2012年9月4日火曜日

「スマートフォン プライバシー イニシアティブ -利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション-」

とりあえずメモ。
適宜、書き足していく予定。

●総務省 平成24年8月7日
報道発表

スマートフォン プライバシー イニシアティブ -利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション-」(PDF)

総務省「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」



パブコメの中でBYODについて触れたものがあり、それに対する回答では
「企業における従業員の私物スマートフォンの業務利用(いわゆる BYOD)における諸課題については、今後の普及動向や実態を見つつ必要性に応じて検討していく予定です。」
となっていました。
BYODは今回の対象外ということです。

2012年9月2日日曜日

サイバー刑法

1.サイバー刑法の名称

 「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が正式な名称なのですが、法務省の「Q&A」の中で、「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(サイバー刑法)」と、括弧書きながら「サイバー刑法」としっかり書かれています。

このサイバー刑法について、いくつかメモ。

(1)成立 平成23年6月17日

(2)法文
  ●法務省:国会提出主要法案第177回国会(常会)
   「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」のページ
   このページで、Q&A、新旧対照一覧、等々が一覧できます。

  また、「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について」(PDF)も公開されています。

(3)石井徹哉「サイバー犯罪に関する法整備」<第161号コラム>
  (デジタルフォレンジング研究会サイト内)

(4)夏井高人「刑法175条の改正」(Cyberlaw)

(5)川井信之「改正刑法、成立」(弁護士川井信之のビジネス・ロー・ノート)


2.参考資料【追記あり】 

(1)吉田雅之「法改正の経緯及び概要」(ジュリスト1431号58頁)

(2)今井猛嘉「実体法の視点から」(同66頁)

(3)池田公博「電磁的記録を含む記録の収集・保全に向けた手続の整備」(同78頁)

(4)加藤敏幸「改正刑法175条とサイバーポルノについて


3.メモ

 夏井先生のブログでも紹介されていますが、この「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」では、刑法175条の改正も行われています。
第175条
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
(1)頒布

 今井猛嘉「実体法の視点から」(ジュリスト1431号71頁)
「電磁的記録その他の記録〔の〕頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体にこれらの記録を存在するに至らしめる行為であると解される。すなわち「頒布」とは,この種の記録を不特定又は多数の人に対して拡散させ,その相手方をして,これをある程度継続的に保存させる行為を意味し,記録「物」の所有権の移転を伴わなくとも,頒布に該当することになる。
この伝統的な「頒布」概念は,(わいせつな有体物を対象とする)改正後の 175条 1項前段では維持されている。しかし,同条 1項後段では,わいせつな電磁的記録という無体物を対象とするため,その「頒布」の意義は,前段のそれとは異なって理解されることになる。すなわち,わいせつな有体物については,その譲渡,賃貸等が「頒布」であり,電磁的記録等については,当該電磁的記録等を,相手方の記録媒体等に出現せしめることが「頒布」に該当することになる
もっとも,電磁的記録の「頒布」においても,当該電磁的記録を不特定又は多数の者の下で記録させる意図で,これを送信等する必要がある。このような意図を欠く単純な送信は,「頒布」に該当しないのである。また,わいせつな電磁的記録を電気送信するが,これが受信先の記録媒体において,ある程度永続的に記録ないし管理されない場合には,やはり「頒布」には該当しないことになる 26)

26) したがって,例えば,わいせつな映像をライブで電気送信したが,受信先ではこれを保存することができない場合には,わいせつな電磁的記録の「頒布」には該当せず,公然わいせつ罪(刑 174条)が成立しうるにとどまる。また,送信情報が,受信先のコンピュータのキャッシュ・メモリ等に短時間,保管される場合は,この種の記録も一定の間,保存されうる以上,電磁的記録(刑 7条の 2)に該当しうるが,コンピュータの電源を切断すると同時にこの記録も消去される以上,当該わいせつな電磁的記録の「頒布」があったと見るのは困難であろう(林陽一「わいせつ情報と刑法 175条」現代刑事法 57号〔2004年〕12頁をも参照)。
※赤字と下線は私が付しました。

【追記】
 「頒布」について、奥村弁護士のブログ記事(2013.6.22付け)を目にしました。
 「不特定又は多数」や「受信元でのある程度永続的な記録・管理」を具体的に考える事例として、大変参考になります。
 奥村弁護士のブログを読んだ後で、ジュリストの解説を改めて読み直したのですが、最初に読んだときにわからなかった意味が今回はわかりました。

(2)併科

 「わいせつ物」と電磁的記録の問題の解決という点は当然押さえなければならないところですが、注意すべき特徴は、①客体(「電磁的記録」)、②対象行為(「頒布」「電気通信の送信」)、のほか、③罰金刑の創設(懲役刑との選択のみならず併科も可能)というところ、です。

 これは「本条所定の犯罪が、利益獲得目的でなされることが多いという実態に鑑みた改正である」(上記今井72頁)とされます。

 実際、わいせつDVDなどの販売により、行為者は相当な利益を得ている事例も多く(報道)、そのためか、罰金の金額もかなり高めな事例(共犯の場合は全員につき)を数件みたことがあります。