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2016年2月23日火曜日

相続と預金をめぐる問題

遺産分割に関する相談を受けて、相談者の方に、理解や納得をしていただくことが大変難しい点に「預金債権等の可分債権は,相続によって当然に分割され,原則 として遺産分割の対象にはならない」というものがあります。
話し合いが煮詰まった時など、「この話を出されても、理解や納得できない」と言われることも珍しくなく、私自身もそういう感じ方は無理のないところだと思いますので、本当に頭の痛いところです。

平成27年4月1日に開催された、法制審議会 民法(相続関係)部会 第1回会議の配付資料になっている「相続法制の見直しに当たっての検討課題」の中に、預金関係として、次の項目があります。
第2 考えられる検討項目
 6 預貯金等の可分債権の取扱い
○ 現行法上,預金債権等の可分債権は,相続によって当然に分割され,原則 として遺産分割の対象にはならないと解されているが,可分債権は,各自の 相続分に応じて遺産を分配する際の調整手段として有用であり,これを遺産 分割の対象から除外するのは相当でないとの指摘もされている。この点につ いて,どのように考えるか。
実際の議論は、次の回で紹介されています。
預金の扱いは、全体の中では「その他の検討項目」という中での位置づけのようです。

(1)第5回会議(平成27年9月8日)

議事録がまだアップされていないのですが・・・、資料は掲載されています。

●部会資料5

この資料の「第1 可分債権の遺産分割における取扱いについて」の項に詳しい内容が記されています。

●委員等提供資料
浅田隆委員「預金債権の可分性の見直しに関する銀行実務の観点からの検討」

この資料は、上記の部会資料5の検討項目などに対応させた表形式になっています。
この部会の委員の中で、唯一、金融機関の方です。ただ、この方も仰っているように他に経済界の人がいないのも特徴です。

(2)第9回会議(平成28年1月19日)

議事録がまだアップされていないのですが・・・、資料は掲載されています。

●部会資料9

この中で「甲案」「乙案」の整理とまとめがされています。
第5回会議での議論が紹介されて、参考にした趣旨の記載があるのですが、第5回の議事録がアップされてないので、どういう議論だったのか、わからないのが残念です。


この資料には、いろいろ考えさせるもの(簡単に是非を決められないもの)が多々ありますが、その中でも(7頁)に次の記載があります次の点は、どういう仕組みをとっても解決しなければならない課題だろうと思います。
当然分割としない預金を代表とする可分債権について、遺産分割を経ずに、各相続人が法定相続分で権 利行使できるという意識が国民にどれほど広まっているか。遺産分割を経て具体的相続 分にしたがった適切な配分がされるよう誘導し、一方で困窮する相続人に負担をかけな い仮払い制度を設けるほうが国民一般の意識に適うという考え方もあろう。
サッサと法定相続分だけでも払出を受けたいということもあります。
預金を調整弁として使う必要がないときだけではなく、単に相続人が行方不明・連絡を無視する・応対しない、という「全員の署名押印、印鑑証明が揃えられない」事態もあり、その場合には、銀行の所定の書類を揃えるが実際には無理だからです。

例えば、成年・未成年を問わず「後見」事案などで、そういった非協力的な相続人がいると、被後見人の生活資金(現金)が足りなくなることもあり、早く払い出ししておきたいと思います。
そういう時には、金融機関の対応は(対応する余地はあるようですが)「杓子定規だなぁ」と思います。

しかしながら、上記のような指摘は無視はできないし、切り捨てられないとも思います。

どちらにしても、相続開始後、遺産分割までの取扱いが、課題になっているので、その部分の仕組みというか手当をどう行うか、が注目されます。



少し前の雑誌の記事をメモしていたので。

金融法務最前線
「親族による預金の無断引出への対応」(濱田広道)
金融法務事情1999号(2014.8.10)4頁)


金融判例に学ぶ営業店OJT預金業務編
「共同相続人の1人からの取引明細開示請求」(須藤克己)
金融法務事情1999号(2014.8.10)148頁)

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