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2015年9月2日水曜日

電気通信サービスの消費者保護ルールの改正(2)

今回の改正の中で最も注目すべき項目と言える部分です。

(書面による解除)


第26条の3(新設)
1 電気通信事業者と第26条第1項第1号又は第2号に掲げる電気通信役務の提供に関する契約を締結した利用者は、総務省令で定める場合を除き前条第1項の書面を受領した日(当該電気通信役務(第26条第1項第1号に掲げる電気通信役務に限る。)の提供が開始された日が当該受領した日より遅いときは、当該開始された日)から起算して8日を経過するまでの間(利用者が、電気通信事業者又は媒介等業務受託者が第27条の2第1号の規定に違反してこの項の規定による当該契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、これによつて当該期間を経過するまでの間にこの項の規定による当該契約の解除を行わなかつた場合には、当該利用者が、当該電気通信事業者が総務省令で定めるところによりこの項の規定による当該契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間)、書面により当該契約の解除を行うことができる
2 前項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除は、当該契約の解除を行う旨の書面を発した時に、その効力を生ずる
3 電気通信事業者は、第1項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除があつた場合には、利用者に対し、当該契約の解除に伴い損害賠償若しくは違約金を請求し、又はその他の金銭等(金銭その他の財産をいう。次項において同じ。)の支払若しくは交付を請求することができない。ただし、当該契約の解除までの期間において提供を受けた電気通信役務に対して利用者が支払うべき金額その他の当該契約に関して利用者が支払うべき金額として総務省令で定める額については、この限りでない
4 電気通信事業者は、第1項の規定による電気通信役務の提供に関する契約の解除があつた場合において、当該契約に関連して金銭等を受領しているときは、利用者に対し、速やかに、これを返還しなければならない。ただし、当該契約に関連して受領した金銭等のうち前項ただし書の総務省令で定める額については、この限りでない。
5 前各項の規定に反する特約利用者に不利なものは、無効とする。 

※文字の色つけ、下線付けは、私が行いました。

1.初期契約解除


法文では「書面による解除」という見出しがついていますが、これは「初期契約解除ルール」として導入が決まっていたもので、改正の目玉になる部分です。

これまで電気通信事業法には、電気通信役務提供を受けている利用者と事業者との間の契約関係に直接影響を及ぼす規定、いわゆる「民事効」を定めた規定はありませんでした。
消費者との問題は、事業者による自主的解決に委ねるというものが同法の趣旨であり、ガイドラインでもその点は明示されていたことです。

また、電気通信役務提供は、特定商取引法の適用除外とされており、消費者にトラブルが生じた場合にも同法を使って解決を模索することができませんでした。

こうして、消費者が電気通信役務提供契約の解消を希望しても、もっぱら合意によるか、一般法での解決を模索するしかなかったわけです。

しかしながら、携帯電話の契約や、光回線・ADSL回線(のりかえも含む)など、強引な勧誘、最近では遠隔操作型ののりかえなど、トラブルが絶えず、改善が長年求められてきました。
もちろん、事業者側も無為、放置であったわけでなく、規制を受けないよう、自主的にいろいろな解決策を打ち出し、対応を図ってはいました。
そのことは、各種団体の自主基準の内容をみるとわかりますし、いろいろな委員会でも主張されてきました。

それでも、トラブルや相談は減らないので、総務省の各委員会やWG、消費者委員会などでも、たびたび取り上げられ、そのたびに、まとめられる報告書等の内容が、民事効をはじめとする各種の規制に前向きな状態から法改正に強く働きかける、というものになっていきました。

今回の改正は、これを踏襲したものです。

2.今後の課題


大事な点が省令に委ねられており、現時点では、その内容が不明ですが、課題は次の点でしょう。

①初期契約解除の対象となる電気通信役務提供契約の範囲(1項)

契約締結後に書面を作成交付すべき契約の全てが該当するのではなく、それよりも狭い範囲とされるようです。

 具体的な論点としては「モバイルが入るか否か」(いわゆる「使ってみないとわからない」ということがあてはまりやすいものを巡った対立)があります。

②初期契約解除の際に、利用者が負担する金額(3項)

利用料といった消費者からも見えやすい利益の対価
 工事費、事務手数料といった事業者の負担であるが、解除する消費者からは見えにくいもの(意識の外側になりやすいもの)

③初期契約解除に関する説明の程度、締結後書面への記載の程度



【追記】H27.9.19.

消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG(第15回)
(平成27年9月10日(木)10:00)

この配布資料に、事務局が作った論点整理の資料のほか、事業者側の意見や要望が出ており、省令や告示が重要な意味を持ってくることがよくわかります。
(規定のやり方によっては、極端な言い方をすれば、解除権を実質的に無力にすることも不可能ではないということ)


【参考文献】
国会の記事録の参照箇所も記載されています。コンパクトにまとまった資料で、過程を短時間で見直すには便利です。

★「立法と調査」2015.7 No. 366(参議院)

「調査査室作成資料」のページ

(PDF)
電気通信事業法等の一部を改正する法律をめぐる国会論議
― 通信自由化から30年後の法改正 ―
総務委員会調査室 齋藤 博道 






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