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2013年7月2日火曜日

詐欺等の犯罪と「三種の神器」

1.詐欺と「三種の神器」

以前から、ヤミ金、振り込め詐欺などにおける「三種の神器」は、次の3つだといわれていました。

①他人名義の預金口座
②他人名義の携帯電話
③名簿

だいぶ前に、ある委員会で、別の弁護士が普通に発言していた記憶があるので、詐欺に関する「三種の神器」とは定着した言い方だと思っていましたが、いつごろ、そういう表現になってきたのかな、とふと思い立ち、改めてウェブ上で調べてみました。

上記の3つを捉えて「三種の神器」と書いてあった記事が下記にありました。

●「キャバクラで借金の果てに農水省事務官が手を出したこととは…
 (MSN産経ニュース2012.8.19)
 なかなか被害件数が減らない振り込め詐欺。捜査関係者によると、他人名義の銀行口座は、他人名義の携帯電話、被害者に電話をかけるためのさまざまな名簿とともに、犯行グループが正体を隠して、詐欺をするための「三種の神器」とも呼ばれているという。
公的機関系の書類で何かないかと検索してみたものの、「三種の神器」という言葉を使っているものはみつかりませんでした。
ただし、振り込め詐欺における「犯罪のツール」が上記の3つであることは、携帯電話不正利用防止法成立過程での国会での議論にありました。
62 - 衆 - 総務委員会 - 12号
平成17年03月29日
○石井(啓)議員
 「この振り込め詐欺については、犯罪のツール、道具が三つあると言われています。一つは他人名義の銀行口座、二つ目には匿名の携帯電話、三つ目はいろいろな名簿、この三つが犯罪のツールと言われておりますけれども、」
また、詐欺集団にとって、①口座と②携帯の必要不可欠性・重要性、を明記したものもみつかりました。

振り込め詐欺撲滅アクションプラン(2008年7月)
 「3 匿名の携帯電話と口座の一掃」
「振り込め詐欺は、匿名化した携帯電話と口座なくして成り立たない。」
●国民生活白書平成20年度版
 「3.消費者被害の状況と経済的損失額について
「そもそも、振り込め詐欺には匿名の口座と携帯電話がなくては成り立たず、・・・これら匿名の口座と携帯電話の発生を防ぐための規制や事業者の自主的な取組は振り込め詐欺の「道具」を押さえることになり、犯罪防止のため今後も重要な対策である。」

2.振り込め詐欺対策と「三種の神器」

上記の「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」に関し、これに基づいて実施される施策の有効性を評価する「総合評価書」がありました。
場所
→ 警察庁の「政策評価」ページの「事後評価 3 総合評価方式 振り込め詐欺対策の推進」

総合評価書(平成24年3月)(PDF)

次の4つの項目(視点)から評価されていました。

①検挙の徹底
②不正に流通する預貯金口座対策
③不正に流通する携帯電話対策
④その他の犯行ツール対策

このうち、②「口座」は「開設の検挙」「口座凍結」「凍結名義人リストの運用」で、かなり効果があったようで、口座利用タイプの振り込め詐欺の認知件数は約半減でした。

効果があった反動か、被害者から現金を直接受け取る手口に切り替えられ、そちらが増加、という皮肉な結果になって、そちらの効果的対策が求められているのは、昨今の報道などで既に明らかになっているところです。

これに対して、②「携帯電話」は、詐欺罪、携帯電話不正利用防止法違反による積極的な検挙などから一定の効果はあがってるようですが、口座のような劇的な減少というところまでは至ってないようです。
携帯電話と口座との違い、について、総合評価書には、次の記載があります。
 犯行に利用された携帯電話については、同一電話番号による再被害を防止するため、被害を認知した警察署長から携帯電話事業者に対して「契約者確認の求め」を行い、求めを受けた携帯電話事業者からの本人確認に当該携帯電話の契約者が応じない場合には、携帯電話事業者は当該契約者への役務提供を拒否することができるという法的枠組みの積極的運用を図っている (注)。

(注) 被害拡大防止のためには、犯行に利用された携帯電話を即時に停止することが最も効果的であるが、携帯電話不正利用防止法を立法する際の検討の過程で、憲法で保障された表現の自由、通信の秘密との関係等の問題があるとの指摘を踏まえ、それに代わる方法として、契約者確認の求めの仕組みが設けられた経緯がある
※ 赤字と下線は私が付しました。

口座凍結も結構揉める金融機関はありますが、揉めなくても早く対応してもらえれば、効果が大、ですが、携帯電話通信役務提供は通信の秘密の壁もあり、ワンクッション必要ですから、効果が薄まる面はあるでしょう。
それから、携帯電話の不正な取得は、どうしても末端の人が行うため、検挙されるとしても、その者の代わりはいくらでもいるということもあるかもしれません。


なお、携帯電話不正利用防止法8条に基づく要請(「確認をすることを求める」こと)の性格について、前述の同じ委員会で、次のような質疑があったので、メモしておきます。

62 - 衆 - 総務委員会 - 12号
平成17年03月29日

○塩川委員
 今、最後のところの、警察の事業者への契約者の確認を求めることができる件について、法案の中身に沿って何点か確認をさせていただきます。法案の第八条は、警察が、犯罪利用の疑いがあると認めた場合、事業者に対し、契約の確認の実施を求めることができると規定をし、警察の求めを受けた事業者は契約者の確認を行うことができるとしております。
 警察の通知の性格は、犯罪捜査権限にかかわるものではなくて、犯罪防止や防犯という警察行政の観点からのものであり、この法案の第八条は契約者確認の内容や契約情報の提供を求める権限を付与したものではないと考えます。 この点の確認を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○石井(啓)議員
 警察署長によります契約者確認をすることの求めは、契約者を特定できない匿名の携帯電話を排除することによりまして、振り込め詐欺等の犯罪の被害拡大を未然に防止する目的で行うものでございます。
 したがいまして、委員が御指摘のとおり、この規定は警察署長に犯罪捜査のために契約者確認の内容や契約者情報の提供を求める権限を付与したものではございません。

○塩川委員
 この法案の第八条は、犯罪捜査における契約者情報の捜査当局への提供について、刑事訴訟法の手続、令状主義によることを変更するものではない、このように考えますが、この点いかがでしょうか。
○石井(啓)議員
 第八条の意義は先ほど答弁したとおりでございますけれども、警察署長によります契約者確認をすることの求めといいますのは、特定の犯罪の嫌疑を前提とする犯罪行為にかかわる携帯電話の契約者を探知しようとするための捜査活動ではなく、また、契約者情報の捜査当局への提供を求めるものではありません。契約者情報が犯罪捜査に必要となる場合は、従来どおり刑事訴訟法に基づき所要の手続がとられることになっているというふうに承知をしておりまして、従来の手続を変更するものではございません。

なお、少し前に、やはり犯罪や悪徳商法にとって重要な手段として機能しているバーチャルオフィスにする警察庁と総務省の取り組みについての公表資料の記事について触れた。

バーチャルオフィスの機能と法規制、電話受付代行業者及び電話転送サービス事業者における疑わしい取引の参考事例(総務省)」2013年6月19日水曜日




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