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2013年6月16日日曜日

「人口カバー率」や「実人口カバー率」

景品表示法に基づく措置命令のきっかけともなった「人口カバー率」と「実人口カバー率」という言葉。
イメージで掴んでいるだけで、実は意味を正確に知らなかったりします。
その点に関してマイナビニュースの「 いまさら聞けないスマートフォン用語」の中に用語解説の記事がありました。

http://news.mynavi.jp/articles/2013/05/24/smartphone_word5/index.html

KDDIの発表資料(20頁)にも「実人口カバー率の算出基準について」というものがあり、当然のことながら触れられています。
エリアカバー率の算出方法は事業者により異なります。
今後当社は、総務省における研究会や業界団体における表示方法に関する議論等を踏まえ、対応してまいります。
「人口カバー率」の曖昧さは、これまでも報じられてきました。

例として SankeiBiz 2012年10月18日付け記事
LTE「人口カバー率」に疑問 通信各社で異なる算定方法…利用者困惑?
この記事では総務省の方式として次のように紹介されていました。
 総務省によると、同省が定義する「人口カバー率」は各地の市町村役場や役場支所、出張所の庁舎に電波が届いているかどうかで判断する。市内全庁舎に電波が届けば市全域を「圏内」とし、市の総人口をカバーしたことになる。逆に1つの出張所にでも届かなければ市全域が「圏外」。総人口に占める圏内人口の比率が人口カバー率だ。
この方式は今回変更されることになったようです。

日経(WEB)の2013年5月29日付け記事
携帯の人口カバー率改訂 「99%でも圏外」是正へ  圏内・圏外の判定精密に鍵握る「メッシュ」
では、次のような記事があります。
 携帯電話サービスの利用可能なエリアの広さを示す指標「人口カバー率」の算出方式が変更される。総務省が新たな公式基準を導入することを決め、7月以降に新規割り当て予定の周波数帯に適用する。全国を約500メートル四方のマス目(メッシュ)に区切り、個々のメッシュごとに圏内か圏外かを判定する。従来方式より実際の電波の状態に近い人口カバー率を算出できるのが利点だ。
~(中略)
 個々のメッシュが圏内か圏外かは、メッシュ内の圏内のエリアが面積比で50%超か否かで判断する。50%超ならそのメッシュ全域を「圏内」と見なし、メッシュ内の人口が携帯電話を利用可能と判定する。50%以下なら、全域が「圏外」として携帯電話を利用不能として集計する。電波がどのエリアまで届くかは、通信各社がコンピューターを使ったシミュレーションではじき出す。
~(中略)
 実は総務省が2009~10年に過疎地への携帯電話網の整備について検討した際、圏内・圏外の判定にメッシュ方式を採用した経緯がある。当時は1キロメートル四方だったが、今回の本格導入に際しメッシュを500メートル四方とさらに細分化して、正確性を向上させることを決めた。すでに割り当てられた電波については引き続き市町村事務所方式を使い人口カバー率を検証するが、「今後の電波割り当てでは、原則としてメッシュ方式を採用する」(総務省移動通信課の田原康生課長)
メッシュ」の単位を細分化することが記されています。
この日経の記事では、「メッシュ」の単位につき、過去の資料の存在が紹介されていました。
そこで、「人口カバー率」について触れた資料がウェブ上にないかを調べてみました。

以下では、新しいものから古いものへ遡る形で記していきます。


(1)総務省(平成22年5月21日公表
   「携帯電話エリア整備推進検討会
   ● 報告書(PDF)

この「報告書」に人口カバー率の定義めいたものはありませんでしたが、「整備の現状」の項において、携帯電話サービスエリア外人口を把握する際に「メッシュベースでみると」などメッシュを基本に圏内外の判断をしていること、その「メッシュとは一辺1kmの正方形をいう。」が記されています。(4~5頁)

   ●携帯電話エリア整備推進検討会
    第4回会合(平成21年12月10日)
     (議事要旨

また、上記の会合の議事要旨をみていたら、人口カバー率、面積カバー率、など複数あり、整備の対象や目的、着眼点によって、それぞれの持つ重要度が異なるという指摘がなされています。
2つほど発言内容を。
○ このエリア整備は対象によって性質が違うわけで、ローカルエリアだとセーフティネットという考え方あり、それから利便性の向上ということもあるが、そういう意味で人口カバー率という概念はそろそろやめたほうがいいのではないか。99.9%まで到達して残りコンマ何%と言えば、もうそんなところまでやる必要は無いのではないかと必ず言われる。セーフティネットという考え方で言えば、エリアとしてそこはきちんとカバーすべきで、何%という議論ではないと思う。指標をそろそろ新しく作っていくことが必要。生活圏としてのカバー率だとか、あるいは面積カバー率といったものはまだまだかなり低い。そういうことに対するひとつの長期的な考え方、最終的にどこまでやるのかをやはり考えておく必要がある。
○ 主に人口カバー率ということを議論しているが、現実には面積カバー率という意味ではまだカバーされていない場所が非常に多い。本当の意味でみんなが安全・安心にどこからでも通信できるという意味では面積カバー率も考えていかなければならない。その場合に今やっているような地上で基地局を作っていくという場合には、非常に大きなお金がかかる。
※ 赤字は私が付しました。

カバー率という場合、一つの物差しで考えると、見落としてしまうことがある、そこを注意しなければならないということでしょう。


(2)総務省(平成19年12月11日公表
  「ユニバーサルサービス制度の将来像に関する研究会
 ● 最終報告書(リンク先は国会図書館アーカイブ)
 ● 資料A(参考資料)(リンク先は国会図書館アーカイブ)

上記「資料A」の中にある「人口カバー率」の説明がありました。
[資料15] 携帯電話サービスの人口カバー率

※人口カバー率:

 1平方キロメートルのメッシュごとにエリアであるか否かを判断し、エリアとされたメッシュ内の居住人口を合計してエリア内人口とし、総人口に占める割合を算出したもの。

(日本の国土面積は38万平方キロメートルであり、38万の1キロメッシュのうち居住地域についてエリア内外を判断したもの)
※ 赤字は私が付しました。

ここでも「メッシュ」が1平方キロメートルの単位とされていることが記されています。
2年半後の上記(1)の報告書に続いています。


(3)総務省(平成15年3月10日公表
   「携帯電話サービスにおけるエリア整備の在り方に関する調査研究会
  ● 報告書(PDF)

  ※(3)のリンク先は国会図書館アーカイブ。

  この時に、エリア整備状況の把握方法が変更されていました。
  「報告書のポイント」と報告書によれば、次のような変更でした。
<従来>
市町村役場及びその支所等、産業団地並びに観光地のすべてがカバーされている場合に、当該市町村全体がカバーされているものとみなして、市町村数ベースの整備率を算定。
一定以上の需要があると見込まれ、かつ、社会資本としての整備効果が高いと考えられる地域を対象として、
①市町村役場及びその支所等の公共施設がある主要地域、
②産業・経済上重要な地域、
③集落等一定以上の居住人口を有する地域
における整備を基本として考える(報告書9頁)。
  ↓↓↓(変更)↓↓↓↓
<今後>
居住地域におけるエリア整備状況を適切に示し得る、夜間人口をベースとしたエリア内人口を基に、整備状況を把握。
 エリア整備を更に推進していくためには多額の経費が必要となることから、今後のエリア整備の対象地域としては、居住地域を基本とした不特定多数の者が日常生活において往来することが想定される地域が中心となるものと考えられ、今後のエリア整備のメルクマールとしては、居住地域におけるエリア整備状況を適切に示し得るものとする必要がある。 (27頁)
この変更については、上記(1)総務省(平成22年5月21日公表)「携帯電話エリア整備推進検討会報告書(PDF)でも触れられています。(2頁)


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